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狼になっちゃった!  作者: 家具屋ふふみに


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19話 そんな意味あったの?

 何食わぬ顔をしてアリーシャさん達が後ろから出てきたけれど、私は知っている。最初からずっと後をつけてきてたって。

 まぁそれ自体は別に私にとって不利益にもならないので、わざわざ咎めるつもりは無い。それよりも私が気にしなければならないのは、ずっと私の胸元に顔を擦り付けているリサさんの事だ。


「羨ましいぃぃぃ……」


「……ガウッ」


「ふぇ? アヤメ?」


 このままではずっと駄々を捏ねそうなので、一旦リサさんを落ち着けるという意味でも背中に乗っけてあげる事にした。

 視線で促し、実際にしゃがんで見せれば正しく意図を理解したようで、不服そうな表情から一転してパァァっと表情が明るくなる。


「いいんですか!?」


「アヤメが言うなら仕方ありませんね…」


 渋々、本当に渋々といった様子でミリアさんが場所を譲ると、興奮した様子とは裏腹におずおずとリサさんが背中に跨った。そしてゆっくりと立ち上がれば、リサさんが燥いだ声を上げる。


「わっ、わぁ! わぁぁっ!」


「リサが珍しく凄い興奮してるわね…」


「そんなに良いの?」


「もう死んでもいいくらい……」


「それは流石にやめてね……」


 ミリアさんも私に初めて乗った時は興奮していたけれど、リサさんの場合はそれ以上かもしれない。ずっとハァハァ言いながら寝そべって頬を擦り付けてるし。過呼吸なるよ?


 サービスとしてテクテクと皆の周りを歩き出すと、ミリアさん達はリサさんを放置して話し合いを始めた。うん、これは放置しないと話進まなそうだもんね。え、もっと速く? 仕方が無いにゃぁ……。ならアトラクションみたいに動いてあげよう。


「にしても友好的なモンスターもいるのねぇ」


「アヤメはかなり特殊な部類だと思いますよ。モンスターというよりかは精霊に近そうですし」


「まぁ特殊じゃなかったら逆に怪しいわよね…アヤメに関しては口外しないっていう話だけれど、他に冒険者に会っても同じように口止めするの?」


「そのつもりです。ただ結局は個々人の良心に訴える形となるので、何時かは話が広まるとは思いますが……」


「人の口に戸は立てられないからね。にしても気になっていたんだけど、アヤメの名付け親って誰なの? 聞いた感じ貴女達じゃないんでしょ?」


「それが分からないのよ。私達が出会った時にアヤメ本人から名前を教えられただけだから」


「唯一分かるのは、名前の感じからしてガイアメルク出身というだけって事ね」


(ん? なになに?)


 なにやら私についての話し合いだったようなので、散々リサさんを振り回して満足したところで会話に割り込んだ。当のリサさんはぐったりしてるけど心底満足してそうだから良いんだよ。


「あらアヤメも混ざる? ならじっくり腰を据えて話せるように安全地帯へ向かいましょうか」


「それもそうね。リサは……歩けそうにないわね」


「そのままアヤメに運んでもらいましょう。アヤメ、お願い出来る?」


グルゥ(いいよ〜)


「ほんとウチのリサが申し訳ない…」


 シオンさんが本当に申し訳なさそうに頭を下げるけれど、私としてはそんな気にしなくても良いんだよ? 人乗せるの結構好きだし。楽しんでる人見るとこっちも嬉しくなるし。


「アヤメ、ミリアも乗れる?」


 まだ本調子ではないミリアさんを歩かせる訳にもいかないので、それについては勿論喜んで引き受ける。ミリアさんを乗せても、大きさ的にはあと一人くらいは乗せれそうな感じかな?


「まだまだ余裕そうね。これならポーター(荷物運び)としても活躍出来そうだわ」


「今となってはアイテム袋のお陰でそこまで需要はありませんけれどね」


 またなんか知らない単語が出てきたよ? ポーターは地球にもあったから何となく意味は理解出来るけど、アイテム袋とは何ぞや? 言い方的に物を多く運ぶ為の袋っぽいけど…あっ、あのフライパンとか取り出してた袋の事か!

 成程成程……言い方的に私の収納魔法の袋版みたいなアイテムが結構流通しているみたいだね。まぁそんなものでも無ければここまで身軽にこんな危険な洞窟に潜れないか。


 私が居る影響か、はたまた大所帯になったからか、モンスターに遭遇することなく安全地帯へと辿り着いた。その瞬間皆が息をほっと吐いたのを見て、この場所が如何に冒険者にとって安息の地になっているのかが分かるね。


「さて、やっと腰を落ち着けて話せるわね」


「あっ、じゃあ私はアヤメと…」


「そのアヤメが話題の中心なんだから駄目」


「えぇ〜……」


 多分ミリアさんはお土産を渡したかったのかな? 楽しみではあるけれど、後でね。


「アイナから言われて今更気付いたのだけれど、アヤメは名付け親が誰なのかを知っているの?」


 アリーシャさんからの問い掛けに頷き、地面に片仮名でミスズと書く。漢字は分からないし、そもそもこの世界に漢字がるかが分からないからね。


「ほんとに字を書けるのね……」


「アヤメは凄いんです」


「ミリアが自慢する事じゃないでしょ……ミスズ、それがアヤメの名付け親なのね。聞き覚えはある?」


「拠点にしているハリアロスに居るガイアメルク出身冒険者は大体知っているけれど、聞き覚えは無いわね」


 ハリアロス……拠点にしてるって事だし、街の名前なのかな?


「私達と同じ場所が拠点なのね」


「まぁこうして出会うのだし、当たり前じゃない?」


「それもそうね。となるとアヤメが何処でミスズという人に会ったのかだけれど……」


 その言葉には首を振る。私が知っているのは名前だけだし、そもそも出会った場所も言語化出来るとは思えない。でもなんでそんなにミスズさんを探すんだろ? 私の事を詳しく知っている人とでも思ってたりする? 見当違いだから止めといた方が良いよ?


「うーん…まぁそうよね」


「そもそもミスズさんに会ってどうするんです? また口止めを?」


「それも無くはないけど、一番はその人にテイムの意思があるかどうかね。名前はテイムする時に使うものだから」


「あぁ…成程。証が無ければテイムしているかは分かりませんからね」


 ミリアさんが私の気になっていた事を尋ねてくれて助かったけれど、まさかの理由だったね。……多分、そんな事意識すらしてなかったんじゃないかなとは思うけど。





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