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1話 犬? になっちゃった!

 ……深い水に沈んでいたかの様に意識がゆっくりと浮上する。

 閉じていた瞳を開けば、目に入ったのはゴツゴツとした岩肌。何処かの洞窟だろうか…? 一先ず身体を起こし、て……


(……ん?)


 起き上がろうと身体を動かした瞬間、見えたのは犬のような手足。

 ……右、上がる。左、上がる。うん、動かすのに問題は無い。


(はぁぁぁ!?)


 待て待て待て! 私人間だったよね!?


(登山して滑落して目が覚めたら犬? って何!?)


 と、取り敢えず落ち着こう。兎も角、私は生きている。それは確かだし、素直に嬉しい。けれど助かったってよりかは……多分、一回死んだんだろうなって。だって人間がいきなり犬にはならんでしょ。

 だからこそ思い当たるのは、転生したという事。……どうせなら人間が良かったな。まぁでもそれは高望みだよね。虫に転生してたら結構最悪だったろうし。


(うーん…俗に言う異世界転生ってやつ?)


 の割には随分地味というか…いや、そうって確定してる訳じゃないんだけど。


(取り敢えず此処が何処かを知らないと)


 四足歩行で洞窟を歩く。意外とちゃんと歩けるのは、多分本能的なものなんだろう。


 私が目覚めた洞窟は幾つもの分岐路がある類いの洞窟のようで、少なくとも今居る部屋のような場所から四本の道がある。


(ここは勘で!)


 うーん…右から二番目にしよう。

 テクテクと歩いて細い道を進んでいく。すると私の耳が何かの音を捉えた。便利~。


(んー……足音?)


 ペタペタとした規則的な音が響く。多分二足歩行の生物だろうけど……人間かは分からない。

 ……そも私人間と会っていいのかな? いきなり攻撃されたりしない?


 そんな事を考えていれば、その足音はどんどんと私の方へと近付いてきた。

 そして私の視界の先にある曲がり角から姿を現したのは―――緑の肌を持った小人。


(…ゴブリンじゃないですかやだー)


 これでここは地球じゃない事が確定した…って今はそんな事よりもゴブリンだ。

 ゴブリンは鼻も目も耳も悪いみたいで、私の存在には未だ気づいていない。というか私の目かなり見やすいね? これも犬の特権?


(そも私犬なの?)


 モフモフした四足歩行だからって犬とは限らないよね?

 またしても思考が逸れていれば、ゴブリンはいつの間にか目と鼻の先に。


(うぉ!? ……って、あれ?)


 近付いてきたゴブリンは随分と小さかった。私の足の間を立ったまま通れるくらいで…いや違うなこれ。私がデカイのか?


(にしても…ゴブリン気付かないな?)


 まるでそこに何も無いみたいに私の足の間を素通りして、そのまま去っていく。

 ……ふむ。これが私の特性ってところかな?


(気配隠蔽に長けた種族って事?)


 まぁそれ自体は有難い。変に戦闘に巻き込まれず済むからね。ただ生きる為には何かを倒さなきゃいけないのと、現状私が能力を使いこなせていないのが問題だ。


(隠蔽してるつもりで実は…とか最悪だよね)


 あと自分がどこまで強いのかが分からない。多分身体がデカイなりに力はあるんだろうけど……お手して潰すのやだよ?

 ……まぁそれもそのうち言ってられなくなるとは思うけどね。


(取り敢えず先に進もう)


 問題は先送り。いいんだよ、今は確認のしようがないんだから。


 テクテクトコトコ歩いて歩いて、時折出てくる別れ道は全て右に進む。するとやっとこさ広い空間に出た。あ、因みにゴブリンはあれから三体くらい出会って、誰にも気付かれなかったよ。我ながら凄いね。


 そして到着した広い空間に広がっていたのは……当然岩肌。うん、知ってた。


(ゴブリンが固まってる…)


 部屋には四体くらいのゴブリンが固まっていて、少し鼻が痛くなる。嗅覚優れてそうだもんね、私…。


 戦う事も出来るけど、その後始末が面倒だから素通り。その時挑発するように跨いだりとかしたんだけど、一切反応が無かった。でも試しに爪で床を引っ掻いたらビックリしてたから、音は駄目みたい?


(初撃だけ気付かれない系の能力なのかな?)


 先制攻撃は大事だ。それで仕留め切れるなら尚良し。


(ご飯探さないとなー)


 今のところ空腹感は無いけれど、それは安心していい理由にはならない。動けるうちに色々と情報を集めないと。

 ……最悪ゴブリンを食べる事も視野に入れておこう。ほんとに最悪だけど。





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