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直感資質テスト

作者: 神崎玄

 深夜に何気なくつけたテレビを見ていると、最近大学生の間で流行っているという本を紹介していた。

『直感資質テスト』という厚さ五センチほどの本だ。

 某大学の学生が編纂したものだという。

 そこには、数千にわたる問題のテストと解答が記されているらしい。

 最初は知能テストの簡易版のようなものになっていた。

 ページを繰っていくと、推理テストのようなものや、写真から癌細胞をあてるクイズになっている。

 世の中にはこれを猛烈な速度で解いていく人がいて、しかも分野によってはほぼ完璧だというのだ。

「数学など大嫌い」という美大生に高等数学の解答を選ばせてみたら全問正解した、というのがきっかけで出来たらしい。

 中には解答のない問題もある。それを避けるのも才能のうちだ。

 最初は東京の大学生の間ではやりだし、全国の大学生の間で問題作りが広まったという。いわばサークルのりで作られたテストなのだ。

 もっと問題を見てみたいと思ってネットを調べてみたが、ほとんど実例が出てこない。

 ネットで問題を公開するのは禁止されているのだとか。

 ネットの本屋で発注する。けっこうな値段がする本だ。

 実際に手にしてみると、何でこんなものを買ってしまったのだろうと思った。

 詐欺にひっかかったのだろうか、とも。

 本当に、わけがわからない問題ばかりなのだ。

 推理小説的な部分はちょっと役に立ちそうな内容だった。

 真っ暗な部屋でどう動けば死体にぶつからず犯人にもぶち当らずに元の場所に行きつけるか、という感じの問題で、解答は斜めの動きを使った予想外のものだった。

 前書には、最後に編著者直筆のメッセージが印刷してあった。

「もし、こんな分厚い本を街角で配っていたら、あなたはそれを受け取りますか」という感じで、受取った人には鋭い直感があるのだ、とも。末尾には署名もしていた。ごくまじめに作った物らしい。

 あらためて前書を読みなおすと、直感が正解をもたらすことへの理解が広まれば、日本の将来にも希望が出てくるだろうと書かれていた。

 そうかもしれないな、と思いつつ、私はその本を書架にそっとしまった。

 これを買った私には、直感資質というものはなさそうだ。

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