2話
アレから一週間、ロクフェルは少し大きめな街へと到着した。
レンガだろうか?それに類似した立派な外壁に囲まれ更には入る人々に軽い問答程度で入れる作り。
「なるほどなぁ~下手に税金作って二の足踏ませるよりは開放してって訳か」
入るための列に並びそう呟くと、後ろに居た男性が少し驚いた表情で話しかけてきた。
「その喋り方に格好って、あんたイーストエンドの人かね?」
「ん?まぁね、一応イーストエンドのアウタースラム出身よ」
それを聞くと男性は目を輝かせ、欲しい物が目の前に有るかのように手を掴んできた。
流石にコレには苦笑いするが、一応とは言え元騎士なので振り払うなんて事はしない。
「同じイーストエンド出身なら流石に知ってるよね!」
「な、何を?」
「そりゃロクフェル様さ!
イーストエンドの貧困で育ったのに腐らずに高潔な精神を持って騎士になり、そして呪われても己の精神で勇者様の手助けをしたってあのお方だよ♪
いやぁ、流石に最初は誇張だって思ったけど行商を続けてるとロクフェル様の噂は耳に入るよ
貧困に苦しむ民の為に悪徳領主を打ち取り!」
そう言い男性は剣を振るようなポーズをとって寸劇を披露し始めた。
さて、ここからは折角だし常にご本人にツッコミしてもらおう。
「街の出入り口を防ぐ巨獣を剣一本でねじ伏せ!」
(隣町の串焼きうなぎが旨いって聞いたからなぁ〜)
「冒険者達の行方不明が多いと聞けば身分なんて無視して助けに行き!」
(エニルが行かなきゃ!なんて言うから行かせない様に先回りしただけだって)
「貧困の村に病の親子が居れば救いに向かい」
(エニルが方向音痴だからだ!)
「富める街には心得として周りの村の為に道を繋げ」
(そりゃエニルが突拍子も無いこと言うから先手打っただけだって)
「そして極めつけは魔神王、その側近こそが真の魔神王と見破り仲間のために命を賭して戦ったですよ!」
(いや、そりゃ正しいんだけどさ!)
と、男性はコイツではなく高潔な騎士であるロクフェルの話を嬉しそうに語るのだ。
いや、ほんとに民衆が英雄譚を望むとは言えまさか此処まで別人に伝えられているのは予想外だ。
「あっ!?す、すいません熱くなってしまい……
私、過去にロクフェル様に助けられた者でして……あのお方の様な騎士がこの時代にいまだ居てくださった事が嬉しくてつい……」
「な、なるほど〜
確かにイーストエンドの方でも彼の噂はよく聞きますね」(主にステゴロロクフェルとか血塗れロクフェルだけどね)
ファンなのか男性はオタトーク炸裂させてしまったのか少し申し訳無さそうだが、それをなだめて順番を待つのだった。
そして一時間も経たない内に二人は入れ、二人は門の少し先へと足を進めた。
ちなみに話足りなかったのか未だに男性は話しているが。