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1話


暗闇の支配する大地。

そこのとある場所でキャンプをする四人の若者。

一人は美しい金髪をした碧眼の青年。

一人は少女と見間違うほど小柄な女性。

一人は薄着の長い深紅の髪が美しい妖艶な美女。

そして一人は真っ黒なフルプレートを装備し顔まで隠してる性別不明の存在。


四人は焚き火を囲み、深刻な表情を浮かべていた。

彼等の行動が今後の世界を左右する、そんな重圧を受けているからだ。

金髪の青年は勇者『エニル』

少女の名は『ニューリ』

美女の名は『レティシア』

そして鎧の人物は『ロクフェル』だ。


彼等は魔神と呼ばれる人の負の感情のエネルギーで産まれた怪物を切り、そしてその長である魔神王を斬る使命を受けたのだ。

そして此処は魔神王の住処の少し離れた場所、彼等の最後の休息である。


「……皆、僕は父の跡を継ぎ領地を立派にして暮らす人々が笑顔でいれる場所にするのが夢なんだ

猫のひたい程度の大きさだけど、果てしなく難しいだろう

でも、その夢を叶えるために絶対に勝たなければならない!」


「も、勿論です!

わ、渡しもお母さんの病気を治して……そ、その……お父さんの借金も返して……ふ、普通に暮らしたいです……」


「私もね〜、故郷でお店のオーナーになるって夢があるのよ

フフ……どんなお店かはヒ・ミ・ツ♡」


突如としてエニルは夢を語り、明日絶対に死なない、そして夢を叶えさせるために死なせないと強い決意で聞く。


「ロクフェルは?」


「――――――」


「ちょっ!?エニル!」


「ロクフェルは……喋れないのですよ!」


「え?あっ!?そ、そうだったね

ロクフェルの事だから立派な騎士として人々を守るかな?」


エニルは苦笑いを浮かべ焦りながら二人に休むように言いロクフェルと二人きりになった。

そして気配が無くなったのを確認して手を合わせて頭を下げた。


「ごめんロック!そう言えば喋れない設定だったよね」


「いや、まぁ……エニルのドジには慣れてるから怒らんけどせめて喋れない設定は忘れるなよな」


「ホントごめんって」


騎士ロクフェル。

彼はエニルの初めての仲間であり、『忘我の鎧』という呪われた装備を魔神達により強制的に身に纏わされたのだ。

呪いは名の通り我を忘れあらゆる物を破壊しなければならなくなるものなのだが、何故か彼は呪いが効かず普通に魔神を斬りいつもの生活を送ったのだ。


だがそれがいけなかった。

それにより例え呪われようと騎士として人々を守る高潔な精神のみが彼を動かす、悪を滅し正義の為に生きると何故か言われ始めたのだ。

そしてそれを見初められ何故か勇者パーティーへと配属された。

まぁその後はなんやかんや有りパーティーでは呪いにより喋れなく鎧を脱げない騎士として頼りにされている。


「それでロックの夢は?」


「俺の夢か……そうだな……アレしかないな」


ロックは少し照れながらエニルに夢を伝えるとキョトンとした顔で驚かれるがすぐに大笑いし、鎧を叩きながら「ロックらしいよ」というのだった。

コレは物語の始まる三年前の出来事だった。























剣と魔法が栄えた此処とは違う世界。

新緑の香りが落ち着きを与えてくれる綺麗な平原ではとある男が寝ていた。


髪の色は赤そしてメッシュ状に金、目付きは鋭く体付きは立派。

そして何より目を引くのはその格好だ。

枯れ草色の上と黒色の袴、そして背負うのは浅葱色の羽織だ。

格好としては新選組の様な感じなのだが、彼の顔付きは日本人ではないのでコスプレ外国人としか思えない。

そして枕の様に使っているのは反りの少ない刀。

鞘は見事に染められており、武器だけでなく工芸品としても価値が有りそうだ。


「んぉ?おぉ、懐かしい夢だなぁ……そっか……もう三年か」


目を覚ますと軽く服を払い、そして何か気付いたかのように上着とかを探り出した。

そして苦笑いを浮かべた。


「あっちゃ〜路銀盗まれたね〜……ま、何とかなっかなぁ」


刀を腰に携え、ゆっくりと歩き出す。

その動きは特に目的が無いのか、分岐路が有れば近くの木の枝を投げて行先を決め、たまに風が吹けばその流れに乗って歩いていく。


そして気が付けば鬱蒼とした森の中。

木々は所狭しと葉を重ね、幹の太さを合い比べ合うかのように密集し、長さを見せつける化のように根の一部は地面から飛び出している。


「おぉ〜、こりゃまた立派な森だな

コレなら飯には困らんでしょ」


彼は地面に手を付け集中しようとしたその時、絹を割いた様な悲鳴が聞こえてきた。

まぁ普通なら助けに行くところだろうが、彼はそこが違った。


「弱肉強食弱肉強食、弱い子は森のご飯にな〜れってね

さてと……『ガイアホーム』」


悲鳴を無視し魔法を発動。

すると出来上がったのは三畳無いくらいの豆腐ハウスで、まさに雨風凌ぐ程度の最低限すぎる造りの面白みが全く無い家だった。

いや、家と呼んでいいのか?洞穴の方がまだ良さそうなのだが。


「ん?んんん?」


豆腐ハウスに入り寝ようとした時、振動音が此方に近付いてきたので顔を出してみると三メートルは優に超える熊の体にゴリラの様な手足の化け物が近付いてきていた。

手には中性的な容姿の金髪の人物が握られており、保存食にでもしようとしているのだろう。


「モルベアーか

コイツ等は縄張りさえ入らなきゃおとなしいし、あのぺったんこちゃんは不運と踊っちまったってとこか?」


「―――――……―」


モルベアーは彼の豆腐ハウスの前に座るとジロジロと顔を眺め、満足そうに息を吐くとその横で座った。

先程の地面に手を付ける動作はこう言った怪物の縄張りの確認であり、彼の家のちょうど少し先がモルベアーの縄張りの境目なのだ。

自分の縄張りを犯してないというのを確認し、礼節を弁えてると感じて何もしてこない。


「おっと、そうだそうだ

お前さん、そのデカさって事はヌシさんだろ?

今日一日世話になる『ロクフェル・ベイリン』、ちと遠くで騎士をやってた男だ」 


「――――」


「世話になるからにゃコレは渡さねえとね」


そう言って袖の下から皮の袋を取り出しモルベアーに投げ渡した。

そしてその匂いを確認するとついてこいと言わんばかりに歩き出すモルベアー。


「人も獣も酒飲んで騒げば友達ってな

さてと、ヌシさんの許可も貰えたし縄張りに入らせてもらうぜ」


彼は草木をかき分けモルベアーのねぐらに入り、軽い宴会をして親交を深めるのだった。

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