メタバース世界の職人
短いです。
それにオチらしいオチも無いので、期待はなさらないで下さい。
がやがや。
わいわい。
いま俺がいるのは、ネット上に構築された空間。
しかし遊ぶのが目的のMMOゲームの世界ではなく、架空の街を作って、そこで生活をして、ともすればお金が発生する仕事まであったりするメタバースとか総称で言われる空間。
ここではまるで現実と変わらない…………と言えるほどの技術力は無いが、それでもそうなりそうな期待感はある夢の空間だ。
まあここに入り浸っていては実生活がまともに送れない悲劇を迎えかねないので、連続で入っていられる時間が限られているが。
そんな事は、まあいい。
このメタバース空間は、実は現実に存在しない要素がある。
……え? 空を飛ぶ? テレポート?
そんなのはどこが作ったメタバースでも標準で入ってるって。
そんなのじゃなくて、このメタバース空間に入った操作キャラクターにひとつ、配られる特殊能力だ。
もちろんメタバース空間内の犯罪に繋がるようなものは排除されているし、もし空間の管理・運営者が想定していない能力の使い方で悪用されたのを確認した場合はすぐ様対策が入る。
と言うかこの特殊能力は本当にしょうがない物で、アバターはみんな同じ身体能力や機能であるが、そこに少しだけプラスされるのが大半である。
例えば、少しだけ速く飛べたり、ジャンプ力が高かったり。
他には、感情表現アイコンやエモーションが1つだけ多いとか。
それで俺がもらえた能力は――――
《さあ、本日もやってまいりました!! メタバース野球の試合開始です!!!》
わーーーー!!
わーーーー!!
《本日は メタメタボーラー 対 フリフリバッターズ の試合となります!
メタメタボーラーは能力で少しだけ特殊な球種を投げられるメンバーを集めた投手層が厚いチームで、対するフリフリバッターズは野球に有利な能力は無いが目が良く的確なスイングでボールを打ち抜く優れた選球眼持ち揃いのチームです!》
わーーーー!!
わーーーー!!
と、メタバース内で行われる野球が始まるが、俺は別に選手じゃない。
じゃあなんで野球なんて見てるんだ? と言われても、俺がもらった能力を見せるにはここが1番適切だからだ。
もうすぐだから、何か言うのはもうちょっと待っててくれ。
《バッターボックスにバッターズの1番打者が入りました。 足下の砂を確認して、バッター構えま…………おお!!?
これは……この構えは、がに股打法だ!! どうした事でしょう!?
観客席らは困惑と面白ポーズ双方のリアクションで大混乱です!!》
がに股打法とは野球のバッターの構え方の1つで、名前の通り大きく又を広げて姿勢を低くする構えだ。
このメタバース野球では普通はバッターの構えは1つしかない。
どっちのバッターボックスに入るかで反転する程度で、構えは実質1つ。
だが俺は、それを破る能力をもらった。
《次の打者は…………こんにゃく打法!! これはまたマニアックだぁ!!! しかしなぜか、その構えをしている本人も困惑しているぞ〜?
観客席からは「ちゃんと打てるのか〜?」とヤジが飛んてきていますが、大丈夫です! リアルの球界で実績がある打法です!!》
こんにゃく打法とは、がに股打法とは反対に内股にして弱気に見える構え方で、バットも体に寄せて持っていて、投球を怖がっているようにも見えてしまうをする構えだ。
しかもこのこんにゃく打法、本物のこんにゃくみたいに体がプルプル震えることも有るらしく、その姿はまさにこんにゃくの如し。
俺の能力は、野球バットを構えるアバターのその構えを、ランダムで変える能力だ。
ほかには一本足打法や天秤打法とか、そういったのもある。
自分だけとか他者だけとかの制限はなく、バットを構えているアバターが対象になる。
だったら自分でバットを持って能力を使えば良いだろって?
今見せたネタにしか見えない構えを見せて、笑われたら恥ずかしいから他者にやらせたに決まってるだろ!
以下に書くメタバース内の職人の定義は、あくまでも自分が妄想内で勝手に付けた名前ですので、極めて高確率で現実とは違うと思います。
メタバース内で職人と呼ばれている存在は、アバター製作時にもらった特殊能力を使って、メタバース内で話題を作る人間を指す。
元は別の設定を考えていた頃に異常な職人をネタに作ろうとしていた名残で、職人って呼び方だけがなぜか残ったのでそのコジツケなんですが……(目逸らし)