同級生
勉強だけはできた私と、侯爵家の嫡男でなんでも完璧にこなすジークウェルト様は王立学園の特別クラス所属だった。
私はいつでも勉強ばかりしていた。特待生を逃せば、王立学園に通い続けることができないからだ。
『おはよう、フィア嬢』
『おはようございます。ジークウェルト・サーベル様』
『クラスメイトじゃないか。……どうか、他の皆のように学園内ではジークウェルトと』
『……では、お言葉に甘えてジークウェルト様と呼ばせていただきますね』
『……ああ、うれしいよ。フィア嬢』
ほほ笑みかけられただけでドクンと心臓が飛び跳ねるような素敵さだった。
高貴な身分であるにもかかわらず、貴族、平民問わずクラスメイトたちに平等に接する方だった。
すでに騎士団の幹部候補でもあり、雲の上のお方だった。
(活躍を聞くのを楽しみにしていた……)
「ところで、どうして私はサーベル侯爵のお屋敷にいるのでしょうか」
「君があんな場所にいるから」
「え?」
「いや……逃げ出した愛犬を探していたとき君が一緒に眠っていたので……いや無理があるか」
言葉の後半は完全に口ごもっていて聞こえなかった。
そして気になることが一つ。
ジークウェルト様は松葉杖をついているのだ。足は痛々しげに包帯が巻かれていた。
「……あの、お世話になりました。ゆっくり眠れましたし……そろそろお暇を……あの、泊めていただいたお礼はいつか必ず」
「……まさかあの家に帰るとでも?」
ジークウェルト様は、なぜか少々怖い顔になった。でも、怖いとは思えない、たぶん心配してくださったのだろうから。
「いいえ、婚約解消された今、ミリスティア家には居場所がありません。仕事を探して生きていこうと思います……」
幸い、ツテはある。魔法陣を描くのが得意な私に以前から声をかけてくださっている方がいるのだ。
「そんな危険な……」
「え?」
「……っ、いやせめて住むところが決まるまでここにいてくれないか? 愛犬を……助けてもらった恩もある」
「そんな、当然の……」
結局、ジークウェルト様の愛犬のジークウェルト様はすぐに探し出してもらえたのだ。
(逆に余計なことをしたと思っているくらいなのに)
「ジークウェルト様も脚を怪我していましたね」
「名前……あ、ああ、犬の方か」
「……サーベル侯爵?」
「あのころのように、屋敷の中ではジークウェルトと呼んでほしいな」
あいかわらずジークウェルト様は気さくな性格だ。
「……そうですね。お許しいただけるなら、あのころのように今だけは。でもそれだと、愛犬のジークウェルト様とややこしく……」
「あの犬のことは、ジークと呼べば良い」
「えっ、良いのですか?」
「ああ、君なら喜んで」
私は弁えているつもりだけれど、こうやってたくさんの女性を勘違いさせているのではないかと思ってしまう。
けれど、このお屋敷を出たら泊まる場所のあてなどなく野宿だ。
「仕事が見つかるまで、お世話になっても……?」
「仕事とは、もしや魔術師ギルドか?」
「え? そうですね。知り合いにお願いしてみようかと」
「……っ、ぜひ騎士団に勤めてほしい!!」
「えっ?」
勢い良く告げられた言葉。
驚き目を見張る私と真剣な表情のジークウェルト様。
遠慮しようとする私にジークウェルト様は、強引なほどにグイグイと騎士団をプレゼンし始めた。
長いプレゼンの最中、食事が三食ついている、というあたりで頷いてしまった私はたぶん食い意地が張っているに違いない。
飼い主にグイグイ頭を押し付けて来る愛犬が好きです。
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