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6話/白無垢のようだ……染めてやろう·其の三

 八雲が銀雅と仲良くなっていた頃ーー。


 珠は部屋で寝る支度をしていた。

 寝台の端に座り、ふんわりと軽くて艶のある髪を櫛で梳かす。

 絹の小袖の寝巻き姿だ。


 ふと、櫛を落とす。

 戦慄の顔。

 (どうして『奴』の気配が……!?)


 ともかく、両手で頬を叩いて気合いを入れる。

 (大人なんだからこれ位の事!

 しっかりしろ!私……!)


 彼女はゆっくりと立ち上がる。

 (何処だ……?

 一瞬で部屋全体が濃い妖気で包まれたからいるのは間違いない。でも姿が見えない!)


その時だーー。

 

 「白金のように美しいな。珠姫……。」

 耳元で男の囁く声。背後から髪を一房掴まれていた。


 「っっっ!!!」

 珠は声を上げそうになったが、それを堪えて部屋の入り口に跳ぶ。が、着地と同時に”彼”は立ち塞がった。


 黒いローブに身を包んだ金髪の鬼。金斬だった。


 叫びたいのを我慢し、手の平を突き出して構える珠。

 「で、出て行ってっ!!

 黙って女の部屋に忍び込むなんて、王鬼の長がやる事なの?!」

何食わぬ顔の金斬。

 「何を慌てている?俺は明日の対戦相手として『挨拶』に伺っただけだ……。」


 金斬が僅かに動き、珠は正拳から蹴りを繰り出した。

 金斬は珠の手と脚を掴んで動けなくする。


 金斬は顔を寄せる。身動ぎしながら眼前の彼から顔を背ける珠。

 「ハハハ……表では強気ではいるが、手と脚がこんなに震えている……!」

 掴む力が強まり、骨が軋む音がする。

 「ぃやっ……!!

 放せっ!!!」

 珠は低い声を絞り出して強気を保とうとする。

 「こんな有様では明日は戦えそうにないなあ?

 今のうちに負けを認めれば、明日は本気で痛め付けたりはしないのだが?出来れば傷のない綺麗な状態で妻に迎えたいからな。」

 「わ、私は初めから貴方と結婚する気なんてないわ!自分の力を試しに来ただけ!」

 「だろうな。だが、そんな事は関係ない。」

 「何故そんなに私を?!他の部族と同じで、私の血筋が目的なの?!上級の天鬼としての血が!」

 「まあ簡単にいえばそうだ。

 ……だが俺が目を向けているのは、お前の『兄』と『父親』の方だ。」

 「やっぱり!一族を強くする為に酒呑童子の血を子孫に取り込みたいのね?!」

 「……少しだけ、違うな。」

 金斬の目付きが鋭くなる。


 何処からか風が起こり、彼の髪とローブが揺れる。砂金のようなものがキラキラと舞う。

 「俺の目的は貴様に流れる『酒呑童子の血を屈服させて、この世から消してやる』事だ……。」


 金斬は怨念のこもった目を向けながら、舌に彼女の髪を絡ませて舐める。

 「では、良い夢を……。『殺したい程、愛しい血』。」

 彼女の顎先に指先を滑らせながら、スッと部屋の隅まで下がる。

 部屋の影に黒のローブが溶け込み、そのまま忽然と消えてしまった。


 冷や汗を流しながらその場にへたり込む珠。

 まだ彼に触れられている気がして、震える自分の体を抱き締める。


 その時、「珠姉ちゃん、お待たせーー!」という声が入り口から聞こえた。八雲が帰ってきたのだ。


 (ダメだ!こんな姿を見せたら八雲が心配する……!

 この子が金斬と戦わなくて済むように私が、奴を倒さなきゃ……!

 奴が酒呑童子の血に固執するなら、同じ血を引く八雲だって危ないもの……!)


 珠はどうにか這って寝床まで行き、悟られないように眠ったフリをした。




(完)

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