まぐろをめぐる攻防
同居していた当時は、義家にある大きなガスのコンベクションオーブンにずいぶんとお世話になった。
あれのためにオール電化になり損なった家である。有効活用したい。
基本料金だけ払ってたようなものだったし。
最大限に活用して、もっとも使ったのが月に五立方メートル。ご……。
ほぼ毎日稼働して、平均すると二~三立方メートルが多かったか。
ちょっと休むとすぐ基本料金。使ってるのにメーター動かねえ。
余談ではあるが、コンベクションオーブンで焼きそばを作ると、仕上がりがべちゃっとならずおいしくできる。
熱風にあおられるから麺が一部カリカリになってたりして、それが好きな人にはたまらないと思う。
天板と庫内を洗うの大変だけどね。
さて。タイトルの「まぐろ」である。
当時はよく、近所のスーパーでまぐろのかま(冷凍もの)を売っていた。しかもそれが小ぶりで、ひとりで一つ余裕でいけちゃうサイズ。
けっこうな頻度で買っていた(なんならストックしていた)のだけど、いつのまにか姿を消した。かなしい。
そんなところに、もう一軒の店で行われた「まぐろの解体ショー」。それ自体にはあまり興味ない(そのとき刺身は求めていなかった)が、かまに飢えていたわたしはフラフラと寄っていった。
「あのー……」
片付けを始めていた係の人に話しかける。
「そのまぐろのかまを、わけて欲しいのですが、可能ですか?」
「はい???」
まあ、そうだよね。どう見ても一般的な卓上オーブンに入るサイズでないし。
あ、鮮魚部門のえらい人が出てきた。
「ご家庭のオーブンに入る大きさではないですよ?」
「そうですね。ただ、見せていただいたかまの大きさだと、『うちのオーブン』には入っちゃうんですよ」
「え、嘘でしょ」
「天板だと無理だけど、網に乗せたら入っちゃうんだなァ」
「入る」「いや、入らない」と攻防すること数分、とうとう先方が折れた。
根負けさせてやったぜ!(そうじゃない
「うちの包丁でも割れないんで、このままのお渡しになりますけど」
「入らない、と文句を言うことはないので大丈夫です!」
なんならね、もうね、一筆書いてもいいよって心境だったの。
それくらいどうしても食べたかったのよ、まぐろのかま。
そしてさらに待つこと数分。
三重くらいに袋に入れられて、値札がついたかまが満を持して登場。
「え……ごひゃく……えん? え、こんな値段でいいんですか?!」
んなわけねーだろ、もっとつけろよ。という勢いで詰め寄ってしまった。
が、奥でも値付けに相当揉めたらしい(時間がかかった最大要因)。そうだよね、売る予定なかったろうしね。
ごめん……。
本来はこのかま、どうなる予定だったんだろ? と思いながらもホクホクで買い物を続け、レジで絶句される。
「え……、こんな商品ありましたっけ?(困惑」
「無理をいって譲っていただいたので…(てへ」
かまは無事に、宣言通り問題なくオーブンで焼けたのであった。予想より時間かかったけど。
そして……。
五人(その日は二世帯)で食べきれなかったよ!
十数年前の鮮魚部門のえらい人、あのときはごめんなさい。