おかあさんの昔話 1
おかあさんつっても、もう八十歳すぎたいいバーさんなんだけどね。
コロナ禍で、人と話す機会があまりもてなくなってるから、おしゃべりしたいのかもしれなあ。わたしも月に数回しか訪ねられてないし。
このところ、ちょいちょいループしながら数ヶ月。毎回謎の新情報をぶっ込みながら、昔語りがなされている。
話してるうちに思い出すんだね、きっと。
さいしょから
▽ セーブしたところから
といきたいところではあるけれど、お互いに記憶力の限界が(おまえはまだ早くないか、半世紀手前
昭和の前半も前半。
彼女が育った家の家長さんは、破天荒な人であったという。このあたりは語りたがらないから、詳細は不明。
わたし、この家長さんと会ったことがあるらしいんだけど、当時のわたしは座布団に乗るサイズ。どう頑張ったところで覚えてるはずがねえ。
家長さんは新しいもの好きな人でもあったようで、地域では最先端な生活をしていた模様。冷蔵庫や洗濯機が出たばかりの頃もすぐに入手したんだとか。「楽しかったから洗濯はよくした」と。
あれよ、脱水機がローラーで、ハンドル回して伸していくやつ。資料集かなんかの写真とかイラスト、歴史(?)漫画でしか見たことないわ。実際使ってた人がこんなに身近なところにいたよ。
びっくりだね。
「あれね、シャツって、伸びるんだねえ」
当時家長さんが好んで着ていたメリヤス地のシャツ(話の流れからインナーと思われる)、洗濯を重ねるうちにビロビロに伸びちゃうんだとか。
あーーー、編み地をローラー……。
力わざで圧迫するから、生地もぺらっぺらにうすーーーくなっちゃって。
「で、怒るんだよねえ……」
んー……、そうかもなあ。そうだよなあ。
衣類は織地の布のほうが多かったんではなかろうか。そんな中のメリヤス地。
惜しい。
「でもあのローラーが楽しくてねえ」
そうかもしれない。わたしもやりたい(無駄に対抗心を燃やす
井戸から水汲んできて、たらいと洗濯板で一生懸命に洗ってた頃にやってきた、画期的な道具だもんね。
あれ、でも洗濯機も井戸から水汲んでないか。水道ないんだから。
聞くとやるとでは大違いだなあ。できる気がしねえ……。
そんな彼女は二層式の洗濯機がすき。
でも加齢プラス別件で身体的に問題を抱えてるから、もう対応できないと思う。水を含んだ布、重いし。
全自動洗濯機には不満しかない。でもたらいと洗濯板には戻りたくない。
ああ、二律背反。