売場マジック
徒歩十分圏内にスーパーが二軒もある好条件の立地に住んではいても、月に一~二回ほど向かう激安スーパーがある。激安スーパーといいつつ、近所の二軒のどちらかで買った方が安いものも多いんだけどね。
ちょっと販売単位がおかしいところに目をつぶれば、目新しいものが手に入りやすい店である。主に魚。
何人かで協力して買い物をしたあと、分けあって精算するのが正しい利用法なんじゃないかと思うよ、この店。通いつめてた頃は三世帯三世代同居してたから、量が要って重宝してた。現在の単世帯ではあの頃のような買い方はできない。
そして、行ってみないと何があるかわからないから、買い物メモは作るだけムダな存在でもある。
それでも魚が欲しくて行くと、今日も美味しそうなのが謎価格で提供されているわけで。物欲と処理能力と運搬能力の闘い。カーン!
思い返せば、はじめてシイラをまるごと買ったのもこの店だった。調理台にも乗りきらないしシンクにも入りきらないからさばいてもらった。隣に立ってた年配のご婦人に「あなた、料理できるの?!」と言われたのはなぜなのか。
シイラの初回は三世帯同居の真っ最中だったので、さっくり二回で消費した。二回目は単世帯になっていたので、五食分になった。なんなのこのコスパのよさ。
と、思っていたのにここ数年は切身しか見なくなった。頼んどいたら売ってくれそうではあるが、こちらもいつ行くかわかんないからなあ。
げんげもここで初体験した。さばくの大変だよ、と魚屋さんから言われたものの「自分でやってみる」と意気込んだのに、美味しく料理してあげられなくて魚にたいへん申し訳ないことをした。たぶん本場で食べてみないと、これの美味しさは解れないと感じた。
近くの店で買える魚も普通に買えるけど、サイズがおかしい。
「ちょっと大きめかな~」と思いながら買って帰り、さて冷蔵庫へと取り出すと、なんかやけにデカい。
――もしかして、育った?
売場で見てると、そんなに大きく感じない。お手頃サイズと思って買ってくるのに、なぜか毎回帰宅すると巨大化する。なぜだ。
トロ箱とパック用トレイのサイズは正しく認識しているはずだ。なのに毎回引っ掛かる謎。おかしい。
そして売場で真剣に選んでいると、「これ、美味しい?」「これ、どうやって食べるの?」と、よく声をかけられる。「こうして食べてる」「わたしもはじめてだからわからない」等と返事をしながら思う。
わたし、客。
ちなみに、お店の人にオススメの食べ方を訊いていると、人が寄ってくる。そこ横着しないで自分で訊こうよー。