踏み越…駆け抜け?
猫の日なので、今日が命日な猫さんの思い出を。
夏の生まれなのに夏にめっぽう弱いわたし。
同居中でもよく床に伸びていた。融けているといってもいい。
義家にいた猫さんたちは、「訪問者が多すぎる」回でも書いたが裏の家からやってきた元野良のお母さん猫さんとともに、全員外出猫である。
わたしが来たときには既にここん家の猫でーす、て顔してた。
最終的に本来の飼い主さんから「もらってください……(家に)帰ってこないので……(涙」と言われる。家にいないとき、本宅に帰ってたんじゃないんかい。
真相:隣家に入り込んでた。お兄さんと仲良しだったらしいよ!
だからか網戸、フツーに開けるもんな。閉めてくれないけど。
お母さん猫さんが、重たい一枚ガラスの引き戸を開けたときはさすがに変な声出た。その瞬間ちょうぶっさいくな顔をひとりだけ見てしまったあの衝撃は、一生忘れられないと思う。
いつもはあんな可愛い顔してるのに……あんなすごい顔になるんだ……。
誰に話しても信じてもらえなかった。ガラス戸を開けたことも、猫の顔があんなに変わることも。
誰も年齢を知らない老猫の本気を見た。よそのお宅でやってない……よね?(弱弱
しかしその子ども(といっても成猫だ)はといえば、お母さん猫さんが逞しすぎるからか、網戸すら開けられない。
「開けたら、閉める。いい子だね~」
ツメが引っ掛かったまま外せなくて、せっかく開けたのに閉めちゃう。不器用の同士である。閉まった瞬間の「あっ……」という表情が可愛い。
今きみが、自分で閉めたんだよ。
できないから、ひたすら人を呼ぶ。
開けてえぇぇぇ~~入れてえぇぇぇぇ~~……
出してえぇぇぇ~~ここから出してえぇぇぇぇ~~……
「へにょ~~ん、へにょ~~~ん……」
にゃー、じゃないんだ……。哀愁漂っとんな、声に。
仔猫のときから変わってないらしい。
そんなある夏の夜のこと。
日課のように床で伸びていたわたし。床つめたくてきもちいい……。
おでかけからお腹ぺこぺこで帰宅した子ども猫。へにょへにょ。
いつもの通り入れてあげる夫。
条件が揃ってしまった。
子ども猫、いつも帰宅するとごはんにまっしぐらである。
一気に部屋を駆け抜ける、障害物などものともせずに。
頭から爪先までトストストストストス! と一直線に踏み越えていかれた、ほんの少しだけ意識のあったわたし。
呆然と見送った夫。
「避けて……いかないんだ……」
あれは誰が言ったのか、あるいは心の声だったのか。




