山椒の実
何年か気にはなっていたものの、気持ちの踏ん切りがつかずに手を出したことがなかった山椒の実。使い途がいまいち思い付かないのが最大の理由である。
それがある日、買い物に出かけた際いつの間にかかごに入っていた。わたしは手にとってすらいない。
となると、入れたのは子である。
自分でやるのかな、最近料理に目覚めたみたいだし。まだ興味があるのはパスタ止まりではあるが。
するとおもむろに「(調理は)お願いしまーす♪」ときた。
……。
…………。
「……きしゃああぁぁぁぁああああっっっ!!!!」
荒ぶる母、爆誕。
レジで取り消しのお手間をかけるのも嫌だし、そのままお買い上げである。
まあ、これもなにかの縁だよねと自分に言い聞かせ、とぼとぼと家に帰る。
興味があったときにけっこう調べたから、レシピは手元にある。
……だから狙われたのか……? 知っているとは、強みでもあり弱みでもある。
傷んでいるところを取り外し、水でよく洗い、たっぷりの湯で茹でる。
ざるにあげて水にさらし、何度か水を取り替える。味見をしてもよくわからない。たぶんこんなもんでいいだろうと、適当なところで切り上げる。
水にさらしている間に、茎と軸を取り除く。レシピによっては最初に茎と軸を取り除くものもあるが、茹でてからの方が断然外しやすい。加熱されて気持ちやわらかくなるから。軸は取らなくても良いとされることが多いけれど、作る料理によっては邪魔になるから取り除くことにした。
よく水気を切ってからさらにペーパータオルで水を拭き取り、小分けにラップで包んで冷凍する。
さて、このあとどうしよう。
「お願い」はされたけれど、何をお願いされているのか。
とりあえずちりめん山椒でも作るか。
ちりめんじゃこを買ってくる。ざっと湯をかけて塩を少し抜く。
酒とみりんを鍋で沸かして煮きり、ちりめんじゃこを加えて灰汁を取りながら煮汁が半分くらいになるまで煮る。
さとう、白だし、しょうゆ、山椒の実を加えて汁気がなくなるまで煮る。
干せるところもないし、しっとり系にしとこ。
薄口しょうゆは常備していないから、まあいいや白だしで。という雑さを発揮。味は変わってしまうが色を薄めにするなら構わんだろう。
たぶん?
味見をしたら、まだ馴染んでいないせいか山椒で口の中がしびれる。もしかして、下処理後の水さらしが足りなかったのだろうか。
でもできてしまったものは仕方がない、悶絶しながら食べる。
次は鶏の唐揚げにぶちこむ予定。




