訪問者が多すぎる
義家の庭には、けっこういろんなものがきた。
冬になると、お隣さんが庭木に餌台を設置してトリさんを呼んでいたのもある。
「こら、ひよ、お前じゃない」
……メジロを呼びたかったんだろうな。ヒヨドリの方がきちゃうんだけど(とほほ
ひよさんはひよさんで、かわいい。
義家で飼っていた猫さんたちを看取って、末っ子(といっても既にシニア)だけになった頃。
この子たちは、もとは裏の猫屋敷からお母さん猫さんが生まれたての子を連れて移住を決め込みにきた関係で、外出猫であった。
そのため、扉は閉めても雨戸を閉めきることはなく、つねに猫が見えるだけの隙間があけてあるのだが。
ある雪の日の夕方。食事の支度をしていると、背中に感じる視線。
ああ、帰ってきたのかな。そう思って振り返ったら。
あれ、顔が違う。
「あんたどこの子~?」と問いかけながら扉を開けにいくと、逃げる。
猫にしてはでかい、というか。
――今、通りすぎてきたそこの布団で寝てるのは誰?
うちの子、でかけてなかった。あんた誰よ。
ちょっと向こうからこちらを窺っている。みつめあうひとりと一匹。
――たぬきだ。
下の田んぼの先にある、山にいるとは聞いたことあったんだけどな。犬の散歩に行くご近所さんが遭遇するようで。
田んぼは田んぼで、いたちみたいな何かが走り回っているのが目撃されている。そっちはわたしも見たことがある。
雉は普通にいる。アオサギも屋根に止まってたりする。あれはちょっとこわい。でかいし。
たぬきか~こんなとこまで来てるのは初めて見たかもな~、とのんきに思っていたら、両隣の奥様方から「ねえ、たぬき見なかった?」と訊かれる。
見ましたね。親子かきょうだいかわからないけど、何頭かで来てますよね、このところ。
トリさんを呼んでるお宅でなにかしらを食べ、うちの庭で遊び、もう片方のお宅でトイレを済ませて山に帰っていた疑惑が。
なにそれひどい。うち以外が。
憤慨しているうちに、来なくなった。
静かになったな~と思いつつ、なぜか設置されている密閉式石油ストーブの給油をすべく庭で作業をしていると。
背後でなんかガサガサ音がする。
たぬきでだいぶ驚いたから、もうそんなに驚かないぞ。今度はなにが来た。
と、振り返ったら。
大型犬おるやん……。
普通に驚いた。
脱走もあれだし、放してるなら論外。
しかも、人の気配には気づいているはずなのに、ものともせずに庭の探索を続ける。あ、慣れてるね、これ。
もっと驚いたのは、大型犬が三種類、それぞれ別の日に現れたこと。似た犬種ではあるけど顔つきが違ったから、個体識別が苦手なわたしでも判った。
この子たちの散歩風景見たことないから飼い主誰かしらんけど、放しすぎ。
小型犬も来た。こっちは脱走組だろうな、人の姿に驚いて一目散に逃げていった。無事だったんだろうか、あの子。
今住んでるアパートは、やもりさんの運動会会場である。
ある年に、お子さまやもりさんがうちの子に捕まって「ちっ」とないた。ついでに噛まれてた、子。
そして、逃げられた。家の中で。
隙間が多いから、たぶん無事に外へ出られただろう。
そして現在、というか数年前から、やけにカメムシとご縁がある。
君ら、家の中に入ってきすぎ。
密閉式石油ストーブは、設置しに来た業者さんも困惑していた。寒冷地じゃないからねえ。
でもね、わたしに訊かれても知らんのですよ。「○日に業者が来るから」しか聞いてなかったから。
 




