やっぱり納得がいかない
前話「なんか納得がいかない」回では、これまで何回やってもカビに敗けて起こせなかったいちご酵母があまりにあっさり起きてくれてなぜかふてくされるという、非常に大人げない心情を吐露した。
それでもできたものは単純にうれしい。
起こせた酵母は一日ほど冷蔵庫で休ませてから次の段階へ。
酵母液と強力粉を同量ずつ合わせていく、元種とよばれるものを作る。粉に対して水分量が多いため、発酵が進みやすいが別の菌も発酵しやすいというメリット/デメリットがある。
酵母液と強力粉、雑菌の繁殖防止という説を信じているのでちょっとだけ塩を混ぜてヨーグルトメーカーで巻き、置いておく。
一日目、四時間経ったところで出かける用事ができてしまい、ほとんど膨らんでいないものの切り上げて冷蔵庫へ入れる。発酵はしていることを確認、変味も異臭もしないからいいやと割りきる。
少しだけ、酵母液の見極めが早かったのだろうかと悩んでみたりする。
二日目、五時間経ったところで一.六倍ほどにしかならない。それでも発酵はしているし、やっぱり変味も異臭もしない。瓶の蓋を開けたら中で圧力がかかっていたようで少しばかり膨らみが増す。一.八倍くらいになる。
どうしてもいちごヨーグルト酵母と比較してしまうのが悪いところではあるが、どうもこのいちご酵母、発酵はするけれど膨らむのが遅い。弱いのかな。
そして三日目、少し迷ったもののやっぱり酵母液と強力粉を混ぜることにする。水と粉でいくか迷ったのだ。もうちょっと安定してからの方がいいかもしれない。
三時間ほど経ったところで一度見てみる。勢いのよい酵母だともう完成している頃なのだが、やっぱり一.五倍ほどにしかなっていない。
「なんというスロースターター……」
五時間半ほどで二倍になったので、完成ということにする。混ぜたへらへの元種の付き具合をみるに、酵母が弱いというわけでもなさそうである。
瓶と中身のあたたまるのが遅いだけかもしれない、そう思って適当なタイミングで瓶の蓋に手をやった際は、そこそこあたたまっていたように感じたけれど、酵母にとっては冷たかったのかもしれない。
翌日まで冷蔵庫でねかせておいて、翌朝生地を仕込むことにする。
たまごで元種を溶きほぐし、はちみつを加え、薄力粉と強力粉と塩、溶かしバターも加えてなめらかになるまでよく混ぜる。生地がかたければ牛乳で調整する。
ラップをしてあたたかいところで発酵させる。手頃な場所が見つからなかったから冷蔵庫の上にヨーグルトメーカーを敷いてその上にボウルを置く。
――あやうく忘れかけた八時間後。
生地がめちゃくちゃゆるんでいて二倍になっていないように見えるけれど、毎度のパターンで間違いなく発酵はしているから、焼くことにする。ワッフルプレートをセットしたベーカーを熱し、スプーンで生地を落としてプレスする。
パンケーキのときもそうだが、ベーキングパウダーやインスタントドライイーストで焼くワッフルよりも、少し長めに焼いてやる。焼きが甘いとどうしても酵母臭が残るから。
焼けたとおぼしきあたりで、ベーカーから甘い香りが漂ってくる。
いちごだ。
いちごジャムに煮るときの香りを薄めた感じがする。なんか、思ったより濃いな。
焼けたワッフルを味見してみれば。
いちご成分は元種だけだというのに、元種を作るときに実も入れて混ぜたからいちごの甘酸っぱさも感じられる。こんなにはっきりとわかる味だなんて聞いていない。
いちごの種のつぶつぶなんかも見えているから、まあいちごだよねって言われたらたしかにそうなのだけれども。
同じように作っても、いちごヨーグルト酵母のときには感じられなかったいちご感である。ヨーグルトの方が強かったのか、あれ。たしかに元種を継続して使うために酵母液を続けて使うとくどくなったな。ヨーグルトが原因だったのか。
そこだけ妙に納得しながら、いちご酵母ワッフルを食べたのだった。
今回は薄力粉をベースに四分の一を強力粉にしたのもあって、ふかふかワッフルができた。強力粉をベースにすれば、もっちりワッフルになる。
この先種継ぎ(今ある元種に酵母液と強力粉を混ぜて発酵させていくこと)するときも、時間と発酵具合に混乱するのだろうな。
「寝起きが悪い」
そんなところは似なくていいと思うのだが。
あれ、酵母って、飼い主に似る……、のか……?
なんでかワッフルが半分以上なくなってるんだなあ(わたしではない
そんな気がして元レシピ(無理なく作りやすい量)の倍量で作って正解だった。元レシピのままならなくなっていた。




