言い張ればどうにかな……らないか
珍しく、子から食事のリクエストがあった。
「ベトコンラーメンを、夕食に食べたい」
あ、外食リクエストだった。これは必然的に夫の休日となる。この前は資格試験の受験で出掛けていたから、言い出せなかったのだろう。
歩いて行ける距離にベトコンラーメンのお店がある。ここの品はほぼ食べられる、ありがたい存在である。ごはんもの(ランチおんりーの定食含む)は食べたことがないが、米で引っ掛かったとしてもそこまでダメージはなさそうだ。
と、思い込んでいる。
夕食とするならば、行くなら開店時間に合わせて。普段の夕食時間より早い。
となると、昼食はそこまでがっつりにしてはいけない。わたしが。
何にしたらいいのか、さっぱり思い付けない。
よし、最終手段だ。
「なに作ってるの~?」
キャベツとねぎを刻んでいたら、後ろから声がした。
出たな、できると居なくなるやつめ。作業中は周辺をうろついているのに、できあがる頃になるとスーーっと居なくなる。運べ。
「パンケーキ」
答えながら、薄力粉とベーキングパウダーをボウルにふるい入れ、粉末だしを加えて泡立て器でかるく混ぜ、卵と水を加えて気持ちかために溶く。
濃いめに出しただし汁で溶く方が好みではあるが、最近サボっているからだし汁のストックがない。粉末だしの存在はこういうときに助かるのだ。
刻んだキャベツとねぎ、適当に切った豚肉を入れてざっくり混ぜたら少しおいておく。キャベツから水分が出るのを待つスタイル。
「ちがうでしょ」
しかし、料理名が出てこないようで、違うことは判っていても訂正ができない。
作るのも久しぶりだしなあ。買ってもこないから現物もあまり目にしないし。料理名が出てこなくても仕方がない……のか?
「キャベツのパンケーキ」
よし、言い張ろう。これはキャベツのパンケーキだ。
甘くない、食事系パンケーキ。
……だいぶ無理があるな。粉よりキャベツの方が多いし。わたしの作るそれは、毎回キャベツを粉と卵でどうにか繋いでいる形になる。もう少しそれっぽくしたいのだが、なぜかこの形になる。なぜ。
あらためてボウルの中身をざっくり混ぜて、フライパンに油を熱したところへ一枚分を広げる。中火のやや弱火くらいでじっくりとキャベツに火を通していく。
キャベツの芯まで粗みじんにしたから、ちょっと長めに焼いてやらないと。
食卓へ出すために、ソースとマヨネーズ、青のりと鰹節に粉末からし缶と薬さじを出したところで、ようやく答えが出たようだ。
「お好み焼きだ!」
「パンケーキですよ、パンケーキ」
あくまで言い張ろうとする作り手。しかしもう誤魔化されてはくれなかった。
そうこうしているうちにいい感じに縁が固まり、パンケーキより雑にフライパンを振ってひっくり返される。たまにキャベツのかけらが飛んでいってしまうのが難。
わたしがお好み焼きソースを食べられなくなったので、食べられるソースのブレンドを各自で行ってもらう。どろソースととんかつソースとウスターソース、しょうゆにケチャップ。
とはいえ各種ブレンドも面倒なので、どろソースととんかつソースの混合にする。お好み焼きの上で。
ブレンドソースを前もって作ると、消費が大変だから……。
あとは好みでマヨネーズをかけたり青のりを振ったり鰹節をかけたり。
すきにお食べ。
かくして、夕食は無事に外食できたのであった。




