ウェルシュケーキ
ウェルシュケーキとは、イギリス・ウェールズの伝統的なお菓子である。ケーキとはいうものの、扱い的にはパンケーキ。ドロップスコーン(パンケーキ)と同じく、グリドルという鉄板で焼くから。
食感は、パンケーキとスコーンとビスケット(クッキーではない方)を足して割った感じ。外はさっくり、中はしっとり。
生地にはスパイスとレーズンが入っているから、焼きたてを濃いめの紅茶といただくとしあわせになれる。
ときどき無性に食べたくなるのに、なぜか作ったことがなかった。ウェルシュケーキを知ったのは大学生の頃で、当時購入したレシピ本に掲載されていた。別のもの目当てで買った本だったのと、いつでも作れるという慢心、そして当時のわたしがレーズンを苦手としていたのが大きい。
ン十年後、ようやく作ってみることにしたのだが。肝心の本がすぐに出せないところにあった。クッキー焼いてないものね、開かないから出してないや。
あれこれ検索した結果、出てきたレシピをそのまま使うと自分のハラが敗ける未来しか見えないため、適度に改変することに。
バターを豆乳クリームバターに、牛乳を豆乳に変えるだけでなく、配合も改造。少々別物になった感が出た。
バターを一センチ角くらいに刻んで、使う直前まで冷蔵庫で冷やしておく。
カレンツはここしばらく家においていないから、レーズンを適当に刻んでおく。粒の大きなものを半分くらいにする程度でいい。
たまごはよくときほぐしておく。
大きめのボウルに、強力粉と薄力粉(すべて薄力粉でも)、ベーキングパウダー、スパイス、砂糖、バターが食塩不使用なら塩(有塩ならなし)を合わせてふるい入れる。スパイスは、シナモンをベースにナツメグ、クローブ、ジンジャーなどを好みで混ぜる。クローブがホールしかなく、ジンジャーはいつの間にか使いきっていたので省略。生姜を少量すりおろして入れればよかった。
結果、今回はシナモンとナツメグとオールスパイス。
粉類のボウルにバターを入れ、カードで刻んだり指先で潰したりしながら、直接指でバターを触らないように(指とバターの間には常に粉があるように)粉と合わせていく。ある程度バターが平たくなったら、手のひらで揉むようにして手早くほぐしていく。きれいに合わさると、粉は「握れば固まるけれど、つまめばほぐれる」状態になる。液体油脂の時よりも粉の色が明らかに変わるから、色ムラのないようにしてやる感じ。
ただし、手の温度でバターが溶けてしまわないように手早くする必要はある。
「ビスケット(クッキーじゃない方)」回で紹介したサブラージュのバター版だ。いや、バターの方が本来のサブラージュだった。液体油脂は応用編だ。
ここへよくときほぐしたたまごを加えてさっと混ぜ、レーズンを加えてさっと混ぜ、粉気が残るようなら牛乳を大さじ一ずつ加えて切り混ぜる。
ここでこねるレシピもあるが、わたしはこねない方が好みだ。カードでひたすら切り混ぜていく。
フードプロセッサーがあると、ここまですべて楽にできる。
わたしは手でやるサブラージュがけっこう好きだから、フードプロセッサーがあった頃もあまり使っていなかったが。急いでいるときは道具の方が断然早い。
出来上がった生地は、ねかせてもねかさなくても。今回は食事の支度の前に生地を仕込んだから、ラップに包んで冷蔵庫でねかせておいた。
生地に軽く打ち粉を振り、一センチ弱の厚みに伸ばしていく。あまり厚いとうまく焼けないから、だいたい一センチくらいのところまででおさえておく。
六センチ径くらいの菊型や丸型で抜くレシピが多いが、抜き型はすべて仕舞った(しかも出せない)ままのため、ビスケット同様に包丁で四角く切ることにする。
フライパンを熱し(SIセンサーの揚げ物温度機能を使用して一六〇度設定)、適度に間隔を空けて生地をならべ、蓋をして六分ほど焼く。
ビスケット生地よりも柔らかいのでフライ返しなどで丁寧にひっくり返し、蓋をして同様に焼く。
けっこう膨らむから、生地の間にはある程度の余裕がないとくっついてしまうのだ。
テフロン加工のフライパンならノンオイルで、鉄鍋は薄く油を引いて焼くべし。バターで焼くと風味がよりよくなるが、焦げやすくもなる。
焼けたら網の上に出す。でないと底が蒸れてしまうから。
熱いうちに砂糖をまぶしておくものも。まぶす前と食べ比べてみたかったからそのまま置いておいたら、冷めたらグラニュー糖がつかないではないか。熱いうちにまぶすのは、油脂効果かこれ。
冷めたものはリベイクしていただくのだ。
複数箇所で確認した元のレシピはだいたい王道の配合割合のようだったが、そこから生地の砂糖を半分に、バターは切り分けた都合で八割、レーズンもついでに少し減らしておくという謎の変更をした。あまりに適当だった割には、好みにはまっていた。
さすがだなわたし。
自画自賛しておこう。
小さめに切ったからか、つまむつまむ。自制心仕事しろ。




