こんなところで四天王
それは数年前のこと。
実家が転居することになり、初手続きを含めた引っ越しの準備をしに都合がつく限り通っていた。準備というよりも、不要品処分の方が意味合いとしては強かったと思う。
約四十年分の蓄積。どこにこんな詰まってたん? というくらい出てくる。「遺品整理と間違われそう(笑」と笑える余裕が当時はまだあった。
それ(不要品の仕分け)だけしていればいいわけではなかったから、遅々として進まない。通うこと数ヶ月、だいぶくたびれてきていた。
自分の家のことがなければ住み込みでやりたい、そんなことを考え始めていた時期でもあった。
ある日の帰り、乗った電車が賑やかだった。ちょうど学生さんの帰宅時間とかぶったらしい。
いちばん目立っていたのは、女子学生さんの三人連れ。
やかましいというわけではなく「若いっていいなあ……」という方面で気になった。
彼女たちの会話内容はほとんど聴いていない(よく聞こえてはいた)のだが、途中からどうやら「今、この場にいないもうひとり」のことを話し始めたことがわかった。
帰る方向が違うのか、はたまた今日は来ていないのか。あるいは普段は一緒に行動していないのか。そのあたりも不明であるが、とにかくそのもうひとりの話題で盛り上がっていたようだった。
別の路線への乗換駅に停車する頃、彼女たちは動き出した。ここで降りるのか。
若者は元気でいいなあ、オバサンはもう虫の息さ……。
そんなことを思いながらぼんやりしていたら、なぜか突然三人の声が揃った。
電車が停まると、ドアの前に横並びで立ち。
「やつは我ら四天王の中でも」
「「「 最 弱 !!! 」」」
??!!
思わず振り返ったそのときプシューとドアが開き、女子学生さんたちは「あははははははは!!!!!」と高らかに笑いながら降りていった。
ホームで電車を待っていた人たちも驚いたことだろう、乗り込んでくるまでに少しタイムラグがあった。そりゃそうだ、扉が開いたら女子学生さんたちが横並びで笑いながら降りてくるんだから。
わたしはいったい、何を見たのだろうか……。
疲れてるからなんか見たのかなあ……幻聴にしてはやけにはっきりしてるけど。
と、意味のない疑問を抱きながら自分の乗換駅で降りたのだった。
あのときの女子学生さんたち、元気かなあ。




