おかあさんの昔話 8
母の通っていた小学校では、12月にクリスマス会があった。
プレゼント交換等はまだ一般的ではなかったようだが(そもそもモノのない時代である)、やっぱり子どものお楽しみを大切にしてくれたのだろうか。
ちょっと向こう(徒歩圏)の神社の敷地から杉の木を一本切ってきて、それを学校でクリスマスツリーに見立てる。
たった一日の行事のために、とても大がかりである。
そして、クリスマス会が終わると、杉の木はまた神社の敷地内に戻される。
――えっ?
「そのままポーンと置いてくる感じで」
子ども相手のクリスマスツリー、大木ではないだろうがそれなりの大きさと想定すると、準備も後片付けもたいへん。
地域の大人が手伝ったりしたのだと思われる。さすがだ。
というか、その捨て置かれた杉の木はどうなるのだろう。
毎年置かれていく杉。
杉ってそんなに早く朽ちないよな……。
神社の人が解体してくれていたのだろうか。さすがにそれはないか。
さすがにそこまでは母も知らないから、想像と妄想が捗って仕方がない。
ただ、この神社敷地の大家さんのことは知っていた。やっぱりあの時代の人付き合い範囲の広さはすごいな。
神社の前の道を渡った向こうに、大地主さんがいたのだとか。
いくら大らかな時代とはいえ、勝手に切っていくというのはあり得ないから、学校か関係者がお願いに行っていたと考えるのが妥当である。
現在でもある、七夕の笹竹を分けてもらってくるのと同じ感じだろうな。
わたしが子どもの頃に笹竹を分けてもらっていた竹藪は現在建物が建っていて、四半世紀ぶりに前を通って「景色が違ぁーーーう!」と浦島になったが。




