かたまらなかったういろう
いや、かたまってはいるの……か?
しばし行方不明になっていた流し型をようやく発見できたので、やってみたかった米粉のういろうに挑戦してみることにする。
流し型とは、卵豆腐やフルーツ寒天などを作るのに使う、四角い容器のことで、わたしはできたものが取り出しやすいように抜き板のついているものを持っている。
なければ耐熱性の保存容器などでじゅうぶんいけるのだが、ぶっちゃけこの流し型は衝動買いした品である。包丁とボウルを買いに行っただけだったはずなのに。
専門店の罠こええ。
さて、米粉のういろうである。
電子レンジのある生活をしていた頃は、小麦粉と砂糖、牛乳を使った、レンジ加熱のミルクういろうをよく作っていた。耐熱ガラスのボウルに材料を合わせて、ラップをしてレンジにかける。
毎回爆発していたが。
途中で混ぜるべきだったか、未だに正解がわからないでいる。
現在のアパートに越してきてすぐは、まだキッチンスケールが入手できていなかった。計量カップと計量スプーンで適当に計り、混ぜたあと流し型に注いで蒸した。
計量カップで計るのは難しいと以前から思っていた通り、やっぱりうまく計れていなかったようで、粉と水分とのバランスが崩れていたため分離した。
その後すぐにスケールを買いに走ったのはいうまでもない。
そのニガい経験は活かせるのか。
今回は小麦粉ではなく、米粉である。黒糖がいいな。
「めっちや、吸う」回で吸水率におどろいた、ハツシモの米粉を使用する。使う黒糖は粉末黒糖、粉末といっても小さなつふつぶがけっこう残るため、事前に溶かすことにする。
参照レシピの水と黒糖を鍋にいれて火にかけ、軽く沸騰させてしばし煮る。黒糖の粒が溶けたのを確認して火からおろす。
ここで痛恨のミスをする。
火からおろした鍋に米粉を投入。いきなりのダマダマである。
逆だよ、逆。米粉を入れたボウルに熱い砂糖水を入れていくの。なにやってんだわたし。団子作るときだって米粉に湯を入れているのに。
しかもあっさり米粉が水分を吸い尽くしてしまい、粉気が残るというか、三分の一くらいが粉のまま。やばい。
やかんに残っていた湯を計りながら加えていく。全然ゆるまない。どこまで入れたらいいのこれ。ちょっと泣きそう。
わりと塊のまま妥協して、流し型に入れていく。型の七分目くらいになった。膨らまないといいのだが。けっこうな量になっちゃったから、一時間くらい蒸した方が安心かもなあ。
こうして、半べそかきながら混ぜているうちに湯の沸いた蒸籠へ投入された流し型。
さらなる悲劇に見舞われる。
約三十分後、どの程度の見た目か確認してみようとふたを開けてみて絶句。
――あふれとるやん……。
予想以上に膨らんで、流し型からあふれる生地、どろどろの蒸籠。
うわまじかー……。洗うの大変だなあ……。遠い目になるのは大目に見てほしい。自分で後始末するし。
やっぱりあれかー、水分の入れすぎ。
蒸しても蒸してもどろどろにしか見えないところを一時間ほどで切り上げる。かたまらなかったらそのときはそのときだ。
あふれた生地でどろどろの側面と底面を簡単に拭き、表面が乾燥しないようにラップをぴったり這わせて冷ます。あら熱がとれたところでさらに足掻いて冷蔵庫へ。冷めるとともに体積はもとの状態へ戻っているけれど、もう少しくらい締まってくれてもよくない?
数時間後、かたまっていないことを前提に冷蔵庫から出す。
うまくいけばラップごしに軽く押さえたら型からはがれるはずなのだけれど。やっぱりはがれない。うん、知ってた。
水で濡らした包丁を、型の縁に沿わせて入れる。うおー、包丁にべっとり。
それでもなんとか抜き板が型から外せたから取り出せはしたけれど、これどうやって抜き板から外す? もう一度濡らした包丁を入れてみたけれど、包丁抜いたらふたたび抜き板にくっつく生地。
せめてもの救いは一応固形物にはなっていた点かな。でろ~んとしてはいたけれど、流れないだけましということで。
結局どうしたか。
抜き板ごと皿に乗せて、スプーンですくって食べた!
黒糖を少な目にしていたのが幸いして、一家で食べきれたよ。通常ばーじょんだったらくどくなって食べきれなかったかもしれない。
ダマダマなところは食感がちゃんとういろうだった。火は通っているという謎の安心感を得た。一時間くらい蒸したしね……これで生だったら立ち直れていない。
今度はちゃんと粉に水を加える方式で作り直すんだ……。
まずは精神的ダメージから回復しなければ。
しくしく。
ショックすぎて写真撮り忘れたーよ。
いつもは失敗記録も残すのだが……。




