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俺のお迎えは黒髪赤目の美少女死神でした

作者: 佐座 浪

見つけて頂き、ありがとうございます!

「——ちわー! お迎えでぇす!」


 学校終わりの、人気(ひとけ)も無い帰り道。痛みですこぶる不機嫌な俺の前に現れたのは、イタい口調に、ボロい黒ローブと鎌を携えた、ファンタジー脳全開のコスプレ美少女だった。


「誰だお前」


「誰って、決まってるじゃん! お迎えって言ったら寿命! 寿命って言ったら死神! つまりはそういう事でぇす!」


 わざとらしいピースサインとウィンク。駄目だコイツ、極まってやがる。聞き返したのが間違いだった。


「はあ、そうですか。俺、この後忙しいんで失礼します」


「いや待てよ! 人を不審者扱いするな! そこはインドア系男子高校生らしく、ライトノベル的展開に胸を踊らせるとこやろがい!!」


 気にせず通り過ぎようとした俺の肩をひっつかみ、慌てる不審者。


 高校生を馬鹿にすんな。現実とフィクションの境目くらいは分かってる。ここは、強引に振り解かせてもらおう。


「すみません。急いでるので」


「えぇ……これでも駄目なのぉ……? じゃあ、仕方ないね」


「——んなっ……!?」


 身体が、動かない。コイツの言葉を耳に入れた途端、前に進めなくなった。


「死神、それは人の終わりを導く者。常識でしょ? 終わりからは誰も逃げられないって」


 ファンタジー脳全開の仮面を剥ぎ捨て、自称死神が実に真剣な面持ちで、俺の目を見てくる。


 気持ちの悪い目だ。比喩でなく、意識そのものが吸い込まれていくのが分かる。


「最期にあんまり手荒な真似はしたくないし、大人しくあたしの話、聞いてくれるよね?」


 選択肢の無い問いに、無言で頷く。未だに半信半疑だが、コイツの話を聞かない限りどうにもならないのは間違いない。


「よぉし! 聞き分けの良い子は好きだぜッ!」


 上機嫌そうに死神がバンバンと背中を叩いてくる。傷が痛むからやめて欲しいんだが。


「さぁてと、時間も無いし本題に入ろう。君は今日、寿命を迎える。だから死神であるあたしが、お迎えに来た。はい、説明終わり! 理解できたかな?」


 (みじけ)ぇ。簡素が過ぎる。理解するとかしないとかいう以前の問題だ。


「……雑だな」


「仕方ないじゃん、他に言える事無いんだもん。職務規定かなんかで、言えない事がいっぱいあってさ……」


 成る程、決まり事のようなものがあるのか。


「死神にも、そういうのがあるんだな」


「あるある。そっかーって思えるようなものもあれば、首を傾げたくなるようなものまでいっぱい。昔、その事で上司を問い詰めたら、俺も知らんって言われてすっごいげんなりした事ある」


 溜息を吐く死神。何気なく、やけに人間らしい単語を出してきたもんだ。


「……こんなのが死神だってのかよ。もっと厳かな感じだと思ってたんだが」


「あれは、そう言う人が書いてるからね。ま、そういうのも居る、って事だよ。タイプによって担当が違うのさ」


「ならお前は、どういう人間の担当なんだ?」


「そりゃあ美少女のあたしは、出会いに飢えてるインドア系男子高校生の担当だよ。ちょっと手違いっぽい君以外は、比較的楽に仕事が終わってる。当世の読み物様々だね」


 陽の光に照らされて、あっけらかんと自称美少女が笑う。


「おっ、時間だ。んじゃ、あたしの手を取って。後は別の連中が、決まってる死因に沿って辻褄を合わせてくれるから」


 呆気なく差し出された死神のか細い手を握ると、周りの景色が遠のいていくのが分かった。


 その手の感触も、むせかえるような草の匂いも、口中の血の味も、あれだけやかましかったセミの声でさえ、ゆっくりと薄れていく。


「……そうだ」


 そういえば一つ、コイツに言っておきたい事があった。


「何、どしたの? 遺言?」


「——お前は、同情しないんだな」


 すると死神は、一瞬だけ驚いたようにその目を見開いた。


「そりゃあ、そうだよ。終わりは誰にでも来るものだし、人生に価値とか見出すのは人間だけ。死神から見たら、どんな人生でも魂は全部一緒だから……」


 そこで一度、言葉が止まる。迷っているのかは分からない。俺にはもう、コイツの顔も見えない。


「それにさ、書類に文字で書かれた人生を読んだだけのあたしに、ペラッペラで月並みな言葉を投げかけられても不愉快じゃない?」


「はっ……成る程な——」


 ついに、口も開けなくなる。ああ、俺が消える。終わっていく。心残りは無い。そんな贅沢は知らない。


「あーあ、言っちゃった。始末書だぁ……」


 ——まだ、聞こえてるっての。笑えるぜ、人生最期に聞く音がこれかよ。


 遺言。まあ、強いて挙げるなら……そうだな。もっと早くに、コイツみたいな奴と出逢いたかったな——

お読み頂き、ありがとうございました!

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