魔法が使えないと追放された私は追放先で魔導具を開発し父を見返します〜今更悪かったと謝ってももう遅い、もう師匠と楽しくやっていくことしか考えていないので〜
12歳の誕生日、シャーロット・レインズは胸を高鳴らせて魔法の適正検査の日を迎えていた。この王国では12歳になると貴族階級の人間は魔法の適正検査を受ける。
シャーロットの生家であるレインズ家は王国の貴族の中でも優秀な魔法使いを多数輩出している名家だ。幼い頃から魔法を使って一族の皆が活躍するのを見ていた彼女は自分もいつかああなりたいと強い憧れを抱いていた。
そしてとうとうその日がやってきた。今は検査を終え、屋敷にある自分の部屋で結果報告を待っている所だった。
「早く結果報告来ないかな〜」
シャーロットは椅子に座って足を揺らしながら、声を弾ませながら無邪気に結果報告を待ちわびていた。ようやく魔法を使える者として一人前に扱われる。そのことが彼女は何よりも嬉しかった。
やがて彼女が待ち望んでいた検査の結果の報告のために父であるアルフレッド・レインズが部屋にやってきた。彼は扉をノックをしてシャーロットの部屋に入ってきた、しかしその顔にはどこか沈痛な表情が浮かんでいる。
「……お父様?」
アルフレッドの表情にシャーロットはどこかただならぬものを感じて恐る恐る父の名前を口に出していた。
「シャーロット……お前に魔法適正は……なかった。それが今回の検査結果だ」
「え……」
アルフレッドの言葉にシャーロットは言葉を失う。魔法の適正が自分にはない……?
「どうしてですか?魔法の適正が私にはない?何かの間違いではないのですか?」
「間違いではない。検査結果は確かにお前の魔法適正がゼロであることを示していた」
「そんな……」
何故自分だけ? 他の自分の家族は皆魔法適正があるのにどうして自分だけないのか。結果を聞いたシャーロットは混乱し、そんなことを考えるのがで精一杯の状態だった。
「とりあえずお前は家から追放だ、シャーロット」
そんな彼女に父の言葉がさらに追い討ちをかけた。
「そ、そんな、追放だなんて!? ど、どうしてですか?」
「どうしてだと?」
叫ぶように尋ねたシャーロットにアルフレッドは吐き捨てるように言った。
「我が家は代々火属性の魔法を継承し、権威を確立してきた。それなのに魔法に適正がないお前をこの家に置いておいてはそれを保つことはできない」
「そ、そんな待ってください、お父様! 私は!」
「黙れ、この落ちこぼれめ!」
アルフレッドの大きな声にシャーロットは肩を震わせて黙り込んでしまう。彼はそのまま無言で少し大きな袋をシャーロットの目の前に置く。袋からは金属の擦れる音がしていた。
「せめてもの情けだ、しばらく困らないだけのお金は渡すからこれを持ってどこへでも行くがいい。この一族の恥め」
こうしてシャーロットは生まれ育った生家を追放された。
✳︎✳︎✳︎✳︎
これからどうしていけばいいのか。
家を追放されたシャーロットは王国を追放され彷徨っていた。
行く当てもなく歩いていると気付けば王国の側にある魔の森まで来てきた。王国を出てから随分時間が経っており、日が暮れようとしていた。
「まずいかも……この森は魔物も出るから日が暮れると危険だ」
シャーロットがそう呟いた時、背後から生物の唸り声のようなものが聞こえた。彼女が振り返るとそこには犬のような姿をした魔物が涎を垂らしてシャーロットをじっと見つめていた。
「……っ!!」
身の危険を感じたシャーロットは全力で逃げ出す。魔物はその彼女の後を逃さないと言わんばかりの勢いで追いかけてきた。
どうしてこんなことになったのか。
魔法の適正がないことが分かってから全てがおかしくなってしまった。
どうして自分ばかりこんな目に遭うのか。
家を追放されるという惨めな目に合い、最後は魔物に食われて死ぬという救いようのない結末を迎えるのか。
「嫌だ、このままここで終わるのは嫌だ……!」
シャーロットがそう叫んだ時、何者かの声が響く。
「それじゃ私が手を貸そうか?」
その声が聞こえたのと同時に、魔物を炎が包み込む。
「え……?」
何が起きたのか分からずシャーロットは呆然とする。シャーロットを追いかけて来ていた魔物はすでに炎に焼き尽くされ息絶えていた。
「こんにちは、可愛いお嬢さん。こんな魔物がいっぱいの森で一人は危ないよ」
声を発していたのは赤眼短髪の黒い髪の少女だ。羽織っているローブも髪と同じ黒色だ。年はシャーロットより少し上の16歳くらいだろうか。
「あ、あなたは?」
「あ、名乗ってなかったね。私はミレア。にしても本当に女の子一人でこんなところでどうしたの?夜のこの森って魔物も出やすいから人間はあまり近寄らないし」
「そ、それは……家を追放されて行くあてもなく彷徨っていたら魔物に追いかけられここに辿り着いたんです」
「家を追放ってこんな幼い娘に酷いことするなあ。しかしまたなんでそんなことに?」
「……私が魔法が使えなかったからですよ」
「魔法が使えないから追放って……君、もしかしてあの魔法王国の出身?」
「はい……」
シャーロットのその答えを聞いたミレアは深い溜息をついた。
「……ほんと、変わんないな。あの国の魔法が使えない人間に対する仕打ちは」
そう呟いたミレアの言葉にはどこか暗い情念が込められていた。
「? どうされたんですか?」
「いいや、なんでもないよ。そっかそれは大変だったね」
ミレアはそういってシャーロットを抱きしめ、頭を優しく撫でる。突然のことで戸惑ってしまったが彼女の体温が今のシャーロットには暖かく感じられた。
「ねえ、私があなたを追放した人間達にやり返す力をあなたに与えるって言ったらどうする?」
「え……?」
シャーロットは思わず息を呑む。
「そんな力があるのですか?」
「あるにはあるよ。ただし条件がある」
そう言ってミレアは言葉を一旦区切り、
「私の助手になること。あなたが私を助けてくれることが条件よ」
「助手? 一体なんのですか?」
「これ」
そう言ってミレアは指にはめている指輪をシャーロットに見せる。赤い宝石のようなものが付いている。
「これは魔法石を使って作成した指輪。これで何が出来ると思う?」
「……分かりません」
「魔法が使えない人でも魔法を使えるようになれるんだよ」
「!?」
その言葉に私は驚きを隠せない。この世界で魔法は適正のあるものだけが使えるものだ。
「ほ、本当なんですか!?」
「まあ、言葉で言っても信用しないよね、ちょっと実演してみようか」
そう言ってミレアは指にはめた指輪を近くの岩に向ける。指輪は光を帯びだし、彼女の前に火球が形成される。
「フレア!」
ミレアが叫ぶと同時に火球が岩に向かって飛んで行く。火球は岩に直撃し、粉々に吹き飛ばした。
その様を見ていたシャーロットは呆気に取られる。
「今のはどうやったんですか!?」
「ああ、この指輪の魔法石に術式を刻んで魔法を発動出来るようにしてるだけ。私だって魔法が使えないんだもの。さっきの魔物もこれで倒した」
魔法が使えない人でも魔法が使用出来るという事実にシャーロットは驚きを隠せない。今まで魔法とは適正がある者が使えると教えられてきたからだ。
しかし。
こんなことが出来るのなら魔法が使えないからと家を追放された私はなんだったんだ。
「ちょ、ちょっと!だ、大丈夫?」
ミレアが慌てた様子でシャーロットに声を掛ける。
「え……?」
「あなた、泣いてる」
彼女の言葉にシャーロットは頬に手をやる。自分でも気付かないうちに涙が溢れ、頬を伝っていた。彼女は慌てて涙を拭う。
「あ、すいません。いきなり涙なんか流して。その道具を見てたら私が魔法を使えず追放されたのってなんだったんだろうって思ってしまって」
「なんかごめんね、嫌なことを思い出させたみたいで」
「いいえ、ミレアさん」
シャーロットはしっかりとミレアを見つめて言う。
「私にその道具についてもっと教えてもらえませんか」
シャーロットのその言葉にミレアは柔らかい笑みを浮かべて答える。
「いいよ、それじゃ私の工房で説明しようか」
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ミレアに連れられてシャーロットは彼女の工房に来ていた。
「どうぞ、大したものはないけど上がって」
「お邪魔します」
工房の中には道具の作成に必要な魔法石が大量に置いてあった。他には道具の設計図のようなものが散乱している。どうやらミレアはあまり部屋を綺麗に片付けるタイプの人間ではないらしい。
「凄い魔法石の量ですね」
「まあね、この魔の森は魔法石がよく取れるから私も居付いてる訳だし」
ミレアは椅子にテーブルの近くにあった椅子に腰掛け足を組む。そして反対側にあった椅子を顎で示し、シャーロットに座るように促した。シャーロットはそれに従い椅子に腰掛ける。
「それでさっきの道具はどう作ったかって話だっけ?」
「はい」
「簡単に言うとね、この魔法石って属性を帯びてるの。基本属性の地水火風ね」
ミレアは指輪を手に持って弄びながら道具が魔法を発動する原理の解説を始めた。
「魔法が使えない人ってのはね、魔法を発動するための魔力はあってもそれに属性を与えて術として使用する術式を持ってないのよ。それが私の研究で分かったこと」
「……だったら自分が術式を持っていない代わりに最初から属性を持っている魔法石に術式を刻んで魔法を使用できるようにすればいい?」
「そっ。理解が早いわねー、凄く助かるわ。まあその代わり使える術式は道具に対して一つだけって不便さはある。魔法石に術式を刻むんだから当たり前の話なんだけど。元から体に術式を持っている人間とはどうしても行使できる魔法に差が生まれてしまうのは仕方がないことではあるんだけどね」
ミレアはシャーロットの回答と話の理解力に満足したようだった。自分の話を理解できる者がいるのが嬉しいのかその顔には笑顔が浮かんでいる。
「にしても本当に話の理解が早いわね、貴女」
「……これでも魔法の名家で育ちましたので」
「成程。しかし神様ってやつも残酷だね、そんな生まれの子に魔法の才能も与えないなんて」
なんだかなぁといった感じで呟くミレア。
「ミレアさん」
そんな彼女にシャーロットは静かに問いかける。
「さっきの話、本気ですか?」
「ん?ああ、私が貴女を追放した奴らを見返す協力をする代わりに私の助手を手伝って欲しいって話?」
「はい」
「そうだよ、本気だよ」
「どうしてそこまでしてくれるんですか……?」
普通出会ったばかりに人間にここまでのことはしないだろう。シャーロットは何故ミレアがここまで自分に世話を焼くのか疑問だった。
「あー、そこは気になるよね。端的に言うと私と同じだったからかな」
「同じ?」
「そう。私も魔力の適正がないってあの国を追い出された人間だから。それが悔しくてここで魔導具の研究を始めたんだけどね。あ、魔導具っていうのはこの指輪見たいな道具の総称ね」
一旦言葉を区切るとミレアは穏やかな瞳でシャーロットを見る。
「だからあそこで死にたくないと言った貴女を放って置けなかった。昔の私を見ているようでね。もちろん少し話をして貴女が魔法の知識があって私の研究に利用できそうって打算もあってのことだけど」
優しく語られるミレアの言葉にシャーロットはどこか安心感を覚えていた。自分と同じ境遇の人間もいることに、そしてミレアの優しさに。
だから、
「ミレアさん、だったら私を貴女の弟子にして下さい」
シャーロットはミレアに対して告げる。ここは魔法が使えない自分にとって唯一の居場所になるという妙な確信があった。
「お、やる気だね。こっちとしては人手が足りてないから願ったり叶ったりだよ。そういえば名前を聞いてなかったな、貴女名前はなんて言うの?」
「シャーロットです。私も貴女に助けて貰った恩を返したいです。これからよろしくお願いします」
「シャーロットか、いい名前だね。これからよろしく!」
こうして奇妙な出会いを果たした魔法が使えない似たもの同士の共同生活が始まった。
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そうしてシャーロットがミレアの元で生活して3年が経った。
今シャーロットは彼女が育った生家にやって来ていた。
「懐かしい。あんなことがあっても人間ってこういう風に思えるのね」
湧き上がって来た懐かしさにシャーロットはある種の感慨を覚えながら呟いた。
「感慨に浸って目的を果たす気がなくなったとか言い出さないでよね」
横からシャーロットに声が掛けられる。ついて来たミレアのものだ。自分一人でいいと言ったのに弟子が長年の目的を遂げる瞬間は見届けると言って一緒に来てしまっていた。
「まさか、ちゃんとやるわ。そのために師匠に色々教えてもらったんだし」
ミレアの言葉をシャーロットは明確に明確に否定する。
「それじゃ師匠はそこでゆっくり見物しててください。ああ、手は出さないでくださいよ。」
「分かってるわよ。そんな無粋な真似はしないわ」
ミレアのその言葉を聞いたシャーロットはゆっくり屋敷の方へと歩いていく。
「あ、貴女は!?」
シャーロットに気付いた屋敷の門を守っていた衛兵が驚きの声をあげる。
「お久しぶりね。お父様に用があるの、通しなさい」
「貴女は一切この家に入れてはいけないと当主様より命令を受けています」
シャーロットの要望をにべもなく断ると槍を彼女に向けて構える。
「まあ、当然そうなるわよね」
シャーロットは淡々と呟き、手を掲げる。
「だったら押し通る。フレア!」
シャーロットが魔法名を叫ぶと火球が衛兵達を吹き飛ばす。火球は同時に門も破壊していた。戦闘の騒音に気付いて次々と屋敷の奥から増援の衛兵達が集まってくる。
「またぞろぞろと。お父様を出してくれればそれでいいのに」
シャーロットはそう呟きながら腰に帯びた剣を抜く。
「殺しまではしないけど多少の痛みは覚悟してね? エアロカッター!」
シャーロットが叫ぶと剣に埋め込まれていた緑色の魔法石が光を放つ。風の刃が形成され、向かって来ていた衛兵達に向かって放たれる。
衛兵達は風の刃の直撃を受けてなす術もなく吹き飛ばされた。
「何事だ!」
大きな声が屋敷に響き渡る。その声の主を確認した私は口角を釣り上げて喜悦に満ちた笑みを浮かべた。
「アルフレッド様」
吹き飛ばされた衛兵の一人が呻き声を上げながらこの屋敷の主の名前を呼ぶ。
「お前達は何をしているのだ。たった一人の侵入者に」
底冷えするような声でアルフレッドは兵士達に問いかける。そうして彼はシャーロットの方を見た。彼女を見た彼の顔には驚きの表情が浮かんでいた。
「お前は……シャーロット……!!」
「お久しぶりですね、お父様」
シャーロットは笑みを浮かべながらけれど淡々と返事を返す。
「まだ生きていたとはな、とっくにのたれ死んだかと思ったが」
「お生憎様、しぶとく生き残りましたよ。落ちこぼれなりに努力して」
「ふん、生意気な口をきくようになったものだ。それで目的は何だ? こんなことまでしでかして」
「単純ですよ。貴方との決闘です」
「ほう、私と戦いたいと?」
「はい。私を落ちこぼれと蔑んだ貴方を見返したいのです、そのために貴方と戦う機会をいただきたい」
シャーロットがそう告げるとアルフレッドは腹を抱えて笑い出した。
「正気か? シャーロット? 魔法の使えないお前が私に戦いを挑んで勝てるとでも思っているのか?」
「ええ、あの時の私とは違いますから。必ず貴方を倒して見せます」
シャーロットのその言葉を聞いてアルフレッドの顔から表情が消える。
「いいだろう、私自ら貴様の相手をしてやろう。貴様は所詮落ちこぼれであることを思い出させてやる! フレア!」
アルフレッドが叫ぶと同時に火球が形成される。
「魔法も使えない出来損ないめ。これで焼き尽くされるがいい!」
アルフレッドの魔法で形成された火球がシャーロットを焼き尽くそうと飛んでくる。
「……フレア!」
シャーロットはそれに対して同じ魔法を発動し、形成した火球をぶつけて相殺した。
「な、何!? 何故お前が魔法を使える!?」
シャーロットが魔法使ったことにアルフレッドは驚きを隠せないようだ。当然だろう、落ちこぼれと蔑んでいたものがいきなり魔法を使って自分の魔法を相殺してきたのだから。
「単純な話ですよ。使えるように道具を使っただけです」
アルフレッドの質問にシャーロットは感情を込めずに返答する。
「何……?」
「この指輪のおかげです」
シャーロットは自分の指にはめた指輪をアルフレッドに見せつける。
「その指輪は……」
「この指輪にさっきの魔法の術式を刻み込んで使用しているんです」
「なんだと……そんな技術聞いたこともない!?」
「それはそうでしょう、私と師匠しかこの技術を今の所扱えないのだから」
シャーロットはアルフレッドの混乱した様子をせせら笑う。とても気分がいい。自分を落ちこぼれと見下していた人間が困惑した様子を見るのはこれほど気分がいいのか、言いようのない高揚感が彼女の心を満たしていた。
「おのれ……これだけで勝ったつもりか! だったらこれはどうだ! フレイムランス!」
炎の槍が形成されシャーロット目掛けて放たれる。彼女はそれを腰に差した剣を抜き、大きく振り抜いただけで突風を発生させ全て打ち落とした。
「は?」
アルフレッドは信じられないと言った表情をしている。
「今のも剣に埋め込んだ魔法石の術式で突風を発生させたんですよ。これで分かって貰えました? 今の私の実力」
シャーロットはそう言い、剣を構え、横に大きく薙ぎ払った。再び突風が吹き荒れアルフレッドを吹き飛ばす。吹き飛ばされた彼はそのまま屋敷の壁に叩き付けられた。
「ぐっ……!」
「どうですか? もう充分理解出来たでしょう。私の方が強いって」
「何故お前がそれだけの魔法を使えているのだ! なんの適性もなかった癖に!」
「ですからさっきから何回も言っているように魔法を使えるように道具を発明しただけですよ」
「魔法を誰でも使えるようにする道具だと……そんなものがあってたまるか! 魔法とは我等のような選ばれた者のみに許された力なのだ! それを……」
「もういい、喋るな」
実力を見せつけてもなお見苦しく喚くアルフレッドにシャーロットは無機質な声で告げた。
「おのれええええええ!」
アルフレッドは叫びながら腰に帯びた剣を鞘から抜く。上段から迫ってくるアルフレッドの剣をシャーロットは軽く受け流して首筋を柄で殴り付ける
「がっ……!」
呻き声を上げてアルフレッドは地面に倒れこむ。シャーロットはそのまま彼に馬乗りになって立ち上がれないよう押さえ込んだ。
「ま、待ってくれ……!! 私が悪かった! お前を落ちこぼれと言ったことも取り消す! だから……!」
「今更謝ったってもう遅いですよ、貴方が謝ったって許す気はないしここに戻る気もない。この後に関しては師匠と楽しくやっていくことしか考えてませんので」
シャーロットは満面の笑みを浮かべながらアルフレッドの必死の謝罪をにべもなく拒絶し、再び剣の柄で殴りつけて気絶させた。
「ふう……」
アルフレッドが気絶したのを見てシャーロットは緊張の糸が切れたように息を吐く。彼女の自分を追放した父親を見返すという目標は今達成されたのだ。
「ようやく終わった……」
✳︎✳︎✳︎✳︎
「終わったの?」
外で待っていたミレアが屋敷から出てきたシャーロットに尋ねる。
「はい」
「それじゃ私との約束守って貰うわよ」
「ええ。これからもよろしくお願いします。師匠」
そう言ってシャーロットはミレアに手を差し出して握手を求める。あの日なにもできなかった自分に力を与えてくれた人に対する感謝とこれからも一緒にいたいという想いを込めて。
「はいはい。まったくここまで戦闘でも魔導具作成の面でもここまで成長するとはね。あなたを拾った時は正直予想していなかったわ」
でもとミレアはいい、
「あなたがここまで立派になってくれて私も嬉しい。それに貴女と過ごす時間はなんだかんだ言って楽しかった。だから……これからもよろしくね」
差し出した手を握り返してきたミレアを見てシャーロットはあの日自分が感じたこの人の側が自分の居場所になると言う確信が間違っていなかったことを嬉しく思い、彼女の手を強く握るのだった。
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