18 冷徹騎士のプロポーズ
ヴァンツァーはやっと私が言ったことに思い当たったのか、手を握って笑い合っていたのに、急に目を見開いて口元を引き締めた。
鋭いんだか、鈍いんだか。
「ミーシャ……あの」
「何、ヴァンツァー?」
隣に座っていたヴァンツァーは、戸惑いながら床に片膝をついて跪いた。
握っていた手を離し、改めて右手で私の右手を取る。
「ミーシャ……」
「うん、ヴァンツァー」
「俺と……結婚して欲しい」
帰ってきてすぐの時とは違う。
私はヴァンツァーをちゃんと知っている。知らない所があることも、ヴァンツァーが私について知らない所があることも、知っている。
それでも、根本的には何も変わらなかった。
ヴァンツァーが居ないと何もできない私と、私が居ないと何もできない彼。
お互いがお互いを必要としてる。自分の足で歩くために。
領地経営なんかは私も手伝えるし、むしろそれしかやってこなかったんだから、たくさん助けないと。
人を見る目も、きっとそれなりに。だって、こんな素敵な人を子供の時に『予約』しちゃったんだもの。自信があるわ。
「もちろん、喜んで。ヴァンツァー、貴方のプロポーズを受けるわ」
涙ぐんで笑いながら答える。
この涙は、怖かった時に溢れた涙とは違う。
この目の前の人が、私との約束を守る為に成し遂げてくれたさまざまなこと。そして、これからは約束を少し変えて二人で頑張ること。
「これは、約束をさせて欲しい」
「なぁに?」
「俺が生きている間、死んでも、ミーシャが幸せでいられるようにする」
「私も約束するわ、ヴァンツァー。私も貴方の一生が幸せになるようにする。……長生きしましょうね」
お互いに約束を交わす。
私だってヴァンツァーを幸せにできる。ヴァンツァーを助けられる。私の原動力も、ヴァンツァーだ。
長い間立ち止まっていてごめんね。
でもその間に蓄えたものは、きっと貴方の助けになる。
貴族になったばかりの貴方の背中を、少しだけ守れるわ。
「……式はいつにする? 落ち着いてから……」
「ミーシャ。その話は、後でしよう」
私の現実的な話に、ヴァンツァーは焦れたように話を遮った。
そういえば、私彼に、一回しかちゃんと言ってなかったわね。
こんなに頑張ってきてくれたのに、約束を守ってくれたのに、確かにあんまりかもしれない。
隣に座るように示すと、肩と肩をくっ付けて腕を絡め、肩に頭を乗せて笑顔で彼を見上げた。
帰ってきてから一度だけ言った言葉。
「大好きよ、ヴァンツァー。昔から今も、ずっと貴方だけが大好き」
お読みくださりありがとうございました!
今朝からまた新連載がはじめましたので、よろしくお願いします!
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