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怪傑!OLレンジャー☆ごくごく普通の働き女子が迷惑なあいつをこらしめる!  作者: 高山流水(高山シオン)
OLレンジャーの友情!三樹の明日はどうなる?

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「さくらさん、落ち着いて。聞いてください」

 和泉が姿勢を正して言う。電話なので、どんな砕けた姿勢で喋っていても問題はないのだが。

「三樹さんの性格です。彼女が、こんなに短期間で男性と深い仲になっているでしょうか?」

「ちょっと、急に何?いずみん、何言ってるの?そんなの……」

「さくらさん」

 和泉の声は落ち着いている。

「三樹さんの性格を考えてあげてください。出会って間もない異性と、急に深い関係になれるようなタイプではないでしょう。いまだに少女漫画のような恋愛に憧れている節もありますし」

「あ、そうか」

 さくらもすぐに同意した。

「そうだね、言えてるかも」

「確認するまでもないかと」

 ふたりは三樹のことを思い浮かべた。三樹のあの性格だ。抱きしめられたら固まって思考停止してしまうに違いない。そんな石造に向かって、さすがの色男も何かをしかけることは出来ないだろう。奇しくも、そんなイメージで一致してしまった。

「いや、待てよ」

 和泉が沈黙を破った。

「そうだそうだ、思い出した。思い出しました。昨日、言ってたじゃないですか、本人が……」

「え?何のこと?」

「ほら、恋人と良い雰囲気になったって……」

「え?そうだっけ……。昨日?昨日ねぇ……あぁー、はいはい!思い出した!」

 言うだけ言うと、さくらが笑い出した。こんな時に笑える彼女の神経はすごい。和泉は呆れるのを通り越して感心してしまう。


 そう、あれは昨日のことだった。なかなか恋人について口を割らない三樹を、ふたりがかりで盛り上げて、なんとか口を緩めさせたのだ。酔ったせいもあったかもしれないが、とにかく三樹が言った。

 それはそれは、重大な事件でもあったみたいに。


 事件が起きたのは、ふたりで食事に行った帰り道でのことだった。とても静かで雰囲気の良い夜だった。でも、三樹はまだ、このシチュエーションに慣れることができなかった。心の中で、いつも自分に(落ち着け!)と言い聞かせている。


 自分なんかの隣に、桐生のような素敵な男性が歩いていることが、いまだに信じられない。ゆっくりと言葉を交わしながら歩く時間も、夢のようだった。桐生の言葉が、いちいち心地よく耳に入ってくる。この時間がずっと続いてくれたら良いのにと、三樹がそう願った時だった。

 ふと、桐生が立ち止まった。三樹も、つられて歩みを止める。


 桐生は何も言わない。ただ、静かに、三樹の目の前に立った。


(え?何?……)


 三樹は緊張してしまい、石のようになった。もう、俯いたまま1ミリだって動けない。どんな表情をしたら良いのかも分からない。頭の中はどんどん真っ白になっていき、顔はどんどん火照ってきた。


 その頬に、そっと桐生の手が触れた。


(え?……)


 三樹の心臓が一瞬、大きく跳ね、そのはずみで肩も跳ね上がってしまった。頭の中は完全にショートしてしまう。目は泳ぐ。自分の心臓の鼓動が聞こえそうなぐらい、動悸が激しくなってきた。


「三樹……」

 桐生の声が一段と甘い。三樹は岩のように動けなくなってしまった。これがもし漫画だったら、頭から大量の湯気が吹き出している。有名な温泉地の光景さながらに。


 桐生の手が頬から顎へと移動してくる。でも、どうすることもできない。三樹は、ぎゅっと目を閉じた……。


「やだー!三樹ちゃん!初キス!?」

 と、さくらが歓声をあげた。

「したんですか?」

 和泉も話の続きが気になって仕方がない。ふたりの視線を受けた三樹は、顔を真っ赤にして、激しく首を振った。頭がもげてしまうのではないかというぐらいの勢いだった。

「違う違う!おでこに!」


「え?おでこ?おでこに何?」

 さくらがキョトンとして聞き返した。


「だから!おでこに……してくれたの……キ……ス……」

 三樹の語尾が、どんどん小さくなっていく。


「え!?おでこにキス!?」

 さくらがこれ以上ないぐらい驚いて聞き返す。

「そうなの!おでこに!」

 三樹が両頬をおさえて、両足をバタバタさせた。彼女なりの、はしゃぐ乙女心の表現なのだろうが、ジタバタしているふうにしか見えない。そのため、彼女には、さくらの表情は見えていなかった。

「え?待って?……おでこにキスされただけ……」

「さくらさん」

 和泉がさくらの肩を叩く。さくらが振り返ると、和泉は静かに頷いた。皆まで言うな、という合図だった。


 三樹はというと、ジタバタするのをやめて、うっとりと遠くを見るような目になっていた。そうかと思えば、ニヤニヤとだらしない顔になり、ゆでだこのように真っ赤になった。それから、体操座りになり、両腕の間に顔を隠してしまった。


 さくらと和泉は、しばらく彼女を観察していたが、そのうち飽きてきて勝手にお酒を飲み始めた。

「でもさ、それってキスって言えるのかな」

 さくらがポツンと言い、三樹が勢いよく顔を上げた。

「いいじゃん別に!」

「そうですよ、さくらさん。恋愛にはそれぞれのペースというものがあるんです」

「それはそうかもしれないけど……でも、おでこにキスでここまで盛り上がれる?」

「三樹さんにとっては、最高にロマンティックな出来事だったんですよ」

「ちょっとバカにしてる!?」

 三樹はとっさに顔をあげて和泉をにらみつけると、

「もういい!飲む!」

と言ってグラスをあおった。さらに、勢いよくグラスを置くと叫んだのだ。

「だってムリ!ムリなんだもん!恥ずかしいよ!……キスとか……絶対ムリ!」


「あの話の感じだと、あれ以上の展開は、まず、なかったと考えられます」

「そうだね。たぶん、ないよ。ううん、間違いなく、ないよ!」

「そこまでキッパリ言わなくても……」

「だって、ほんとうにそう思うから」

 さくらに悪気はない。それは、和泉も分かってはいる。

「とにかく、本人に言うのは、いったん止めにしましょう。それに、現時点では、さくらさんが目撃したという事実しかありません。三樹さんが、私たちの言うことを疑う可能性は低いと思いますが、恋人のことを信じたい気持ちと天秤にかけた場合どうでしょう。というより、天秤にかけなくてはいけないという状況になった場合、三樹さんは相当、苦しむんじゃないでしょうか」

「それは、可哀想かも」

「正直、その桐生とかいうゲス男がどうなろうと、私は興味がありません。ただ、できることなら、三樹さんの傷は浅い方が良いと思いませんか?」

「思う!だって、あいつに騙されてただけなんだもん!」

 さくらが力強く答え、和泉が受話器をわずかに耳から遠ざける。

「ただ、いくら三樹さんでも、この先いつ何があるかは分かりません」

「え?あるかな?」

「さくらさん、決めつけは良くありませんよ」

「はぁーい」

「いいお返事です。ですから、私たちが行動を起こすにしても、早いに越したことはありません」

 女ふたりの作戦会議は夜更けまで続いた。途中、さくらはお肌のお手入れを開始し、和泉はお茶を淹れて飲みながら……。


なんと、OL三樹はワルイ男の遊びの相手にされかかっているようで……

さくらと和泉の作戦はいかに?

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