表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怪傑!OLレンジャー☆ごくごく普通の働き女子が迷惑なあいつをこらしめる!  作者: 高山流水(高山シオン)
女子会で三樹の女子力UP大作戦!?

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

75/88

75

買い物が終わると、荷物が多いのもあって、下北沢のさくらのマンションに行くことになった。途中で買い出しをして帰るのだ。


 電車に乗ると、三樹を真ん中にして、三人は並んで座った。三樹は、すぐにスマホを取り出した。実は、それまでもトイレに行ったりするたびに、スマホを取り出して桐生からメッセージが来ていないか確認をしていた。

 そのたびにがっかりしていた。

 今日は、一度やり取りがあったきりだった。米いちゃもん男のところに、OLレンジャー三人で出動した時だ。思い出しただけで、顔がにやついてしまう。まさに恋人同士といった感じの、それは甘ったるいやり取りだった。


「メールですか?」

 和泉が横から言った。三樹が振り向くと、少しだけこちらを向いていた。スマホを覗き込んでいる様子はない。


「来てない」

 三樹が答える。その言い方に物足りなさがにじむ。


「そうですか」

 和泉は前を向いた。そして静かに言った。

「きっと、友達と会ってるからと気を使って、メールを送るのを控えてるんでしょう。そんなふうに大人の対応ができる方なんですよ」


「そうだよね」


 頭では分かっても、やっぱり少し寂しい。付き合い始めというのは、もっと楽しくても良いのではないだろうか。でも、和泉が言うように、大人の対応なのかもしれないと、三樹は自分を納得させるようにスマホを仕舞った。


 その隣では、さくらがニコニコしながらメッセージのやり取りをしている。あれだけ歩いたのにも関わらず、少しも疲れている様子がない。アスリートか。そう思っていると、

「ね、せっかくだからワイン買おうよ。おいしいチーズも食べたいね!」

と、急に振ってくる。突拍子もない。でも、三樹が何かを答える前に、スマホの操作に戻ってしまう。どれだけマイペースだ。


「お腹がすきました」

 和泉がぽつりと言う。こっちもマイペースだ。


「そうだよね!いっぱい歩いたもんねー!」

 さくらが答える。その手の中のスマホが短くバイブする。さくらがメッセージをチェックしている。なんとも、ゆるい空気だ。そうこうしているうちに、電車はゆるやかに減速をして、下北沢駅に到着した。


 駅を出ると、こちらもたくさんの人出だ。待ち合わせをするカップルや、わいわいと駅の階段を下りてくる若者のグループや。活気に満ち溢れている。同じ沿線でも、降りる駅によって街の雰囲気は全く変わってくる。

 三人はスーパーに立ち寄って買い物をした。和泉がカートを押しながら歩き、さくらが隣に並んだ。和泉がさくらの部屋の冷蔵庫の状況を確認し、さくらがニコニコと答えている。三樹はその後ろをぶらぶらと歩いた。たまにスマホが鳴っているような気がして取り出すが、気のせいだった。

「大人の対応ができる方」と和泉が桐生を評価して言っていた。

 となれば、自分も「大人」にならなくちゃいけないんだろう。「大人」って何なのだ。分かるようで、よく分からない。


 ワインのコーナーで、さくらが立ち止まった。

「ねえねえ三樹ちゃん」

さくらが呼ぶので、三樹も輪に加わった。たくさんある種類の中から、和泉が考えている料理との相性やら、ラベルの雰囲気やらで決めていく。ワインのほかにビールやチューハイなどをカートに入れていく。だいぶ荷物が増えた。それも、けっこう重たい。


 会計を済ませると、和泉とさくらがどんどん袋につめた。大人のやりとりについて、三樹はまたぼんやりと考える。それは、我慢をするということなのだろうか。


 三人は荷物をぶら下げて、さくらのマンションに向かった。マンションは駅から、そう遠くないので、頑張って歩いて、もっとお腹を減らそうという作戦だ。遠かったら迷わずタクシーにするところだ。


その時だ。


 三樹のピッチが鳴った。久々の、いやな感じのバイブ音である。こんなタイミングで、OLレンジャーの招集だ。しかし、当の三樹は両手に荷物を持っていたため、唐突に鳴り出したピッチを取り出したくても取り出せない。買い物袋の取っ手が指にまとわりつく。


「大丈夫?」

「ちょっとキツイ」

などとやり取りをしているうちに、三樹のピッチが静かになった。


 すると、当然のように、和泉のピッチが鳴る。このピッチを鳴らしている「誰か」は、三人が一緒にいるとは知る由もないのだから。次に呼び出されるのが自分だと分かっていた和泉は、すでにピッチを取り出していた。


「出なくても良くない?」

 さくらが肩をすくめた。

「だってほら、みんな荷物がすごいし」


「じゃ、これを」

 和泉が手に持っていた荷物をさくらに押し付けた。


「え?なになに?」

 困惑げに、さくらが荷物を持つ。

「重いよぉ」


 そんなことはお構いなしに、和泉はピッチの着信を受けると、内容を聞いてから言った。

「ふたりは先に行って、準備を始めていてください。私も要件を片付けたら、その足で向かいます」

 三樹とさくらが返事をするや、一瞬のクールな風が起こり、和泉が姿を消した。


これから、さくらの部屋で女子会というとき!

OLレンジャーの呼び出しがかかってしまった。ひとりで現場に向かう和泉。彼女を待ち受けているものは、はたして……?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ