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怪傑!OLレンジャー☆ごくごく普通の働き女子が迷惑なあいつをこらしめる!  作者: 高山流水(高山シオン)
ドキドキのディナーは波乱万丈の予感しか
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(死ね!死ね!シネェェェェェ!)


顔面に白黒のペイントをほどこした黒髪ロン毛のメタラーが、三樹の心の中でシャウトしている。


そんな三樹の心境を知るはずもない水沢が、ここぞとばかりにキャピッと首をかしげた。勝負顔だ。


その髪がふわっとして、微妙に三樹に触れてきて、イラッとした。舌打ちからの、払いのけしたくなる。やらないけど。


(こっちだって!)


思わず対抗意識を燃やしそうになった。


今の三樹は、昨日までの潤い不足したぱっさぱさボッサボサの髪ではないのだ。


シャンプーのコマーシャルみたいに、すっぱぁ~ん♪と髪をおろして、さらさら~ってやってやることだってできるのだ。さらさら~って!


三樹がヘアゴムに手をかけようとした瞬間――。


「ちょっと、何言ってんだよ!」

ヒガシ君が横から口を挟んだ。三樹、軽くズッコケる。


「ヒガシ先輩には言ってませんから」

水沢が、マンガみたいなしかめっ面をする。その顔すら計算なのだ。まったく忌々しい。


ヒガシ君がムキになって何かを言い返そうとするが、水沢はぷいと顔を背けてしまった。


と、その時だった。桐生がわずかにテーブルに身を乗り出した。そして、言った。


「水沢さんは、杏ちゃんて呼んでほしいの?」


「はいっ!ぜひ!」

水沢が、間髪を入れず、目をキラキラと輝かせて答えた。


(仕事中でも、こんなにいいお返事はしないよね……)

三樹の気分がどんどんシラケる。


「桐生さん、気にしなくて良いんですよ。水沢さんて、ちょっと変わってる子なんで」

ヒガシ君が、一生懸命になってフォローしようとしている。


「もー、ヒガシ先輩は、余計なこと言わなくて良いんですぅ」

水沢がふくれっ面になる。


三樹の胸の中は、変にざわついてしまって落ち着かない。


水沢と桐生が変に距離を縮めるなんて、どうしても耐えられない。


ほんとうに、心の底から

(水沢!このフグ女!水族館に帰れ!)

(水族館では近すぎる!海だ!海に帰れ!)

と思った。


(むしろ、この女を瞬間移動でどこかに飛ばしてやりたい!)

(そしてもう帰ってくるな!)

(二度と!ネヴァー!)


「じゃ、私のことも三樹ちゃんて呼んで下さい」

と言って笑いを取ることができたら、もっと楽なのかもしれない。


三樹は、何食わぬ顔でメニューを見た。つもりだった。でも、桐生と水沢のことが気になってしまい、ちっとも内容が入ってこなかった。胸が痛む。


(ふたりの楽しげな会話を聞けば自分が落ち込むだけ……)

(だったら、いっそ、耳に蓋をしたほうが精神衛生上いいのかしら……)

ついには、こんな悲壮な決意すらしようとした。


すると、急に、

「町田主任も、言ってやってくださいよ」

と、ヒガシ君が話題を振ってきた。

しかし、このときの三樹は、自問自答の真っただ中にいて、何も聞いちゃいなかった。


「え?何を?」

慌てて聞き返す。


ヒガシ君にとっては、それはショックだったらしい。肩を落として、

「もー、聞いてなかったんだぁ……」


そんな中、桐生は終始にこやかにしていたが、ふいに口を開き、そして、言った。


「杏ちゃん」


その言葉が三樹の胸に突き刺さった。中世の騎士のサーベルみたいに、ズドッと。


三樹ショック!どうなる……どうなる俺!どうなる……!?

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