表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怪傑!OLレンジャー☆ごくごく普通の働き女子が迷惑なあいつをこらしめる!  作者: 高山流水(高山シオン)
ドキドキのディナーは波乱万丈の予感しか

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/88

45

翌日も仕事なので、お酒は軽めにして食事を楽しむことにした。全員が電車で通勤しているため、駅ビルのレストランフロアにある洋食店だ。運よく席が空いているようだった。


桐生は微笑をたたえて、女性ふたりを先に店内に入らせた。このように、レディ・ファーストが自然にできるあたりも、大人の男という感じだ。


(かっこいい……)

三樹は、またしても、うっとりしてしまった。世界に紗がかかってステキに見える。


「どうぞ」

桐生の声がし、

「あ、すみません」

と、答えたのはヒガシ君だった。


桐生の脇を通りながら、照れくさそうに頭をかいている。


ちょっとレトロな雰囲気の、落ち着いた店内には、白い制服を着たウェイターが何人か立っている。なかなかのイケメン揃いだった。


そのうちのひとりが振り返り、挨拶をし、人数を尋ねた。

「四人です」

ウキウキとした声で、水沢が答えた。ウェイターが水沢に笑顔を向ける。


三樹は微妙な気持ちになる。


ウェイターが、店の奥に位置した、ゆったりとした四人掛けのテーブルを案内した。


桐生は後ろから歩いてきたが、テーブルにつくとすぐ、三樹と水沢に壁側の広々としたソファの席を勧めた。


三樹はお礼を言いかけたが、水沢の、

「きゃっ!ありがとうございますぅ!」

に、かき消されてしまった。三樹の表情がこわばる。


(なんだかなぁ)

と、思いながらも、辛うじて桐生に会釈をした。桐生も気がついて、応えてくれた。それが、とてつもなく嬉しい。


水沢はというと、ぽんとソファに座るや、

「いい雰囲気~」

などと、店内を見回して楽しげにしている。


そんなことは、どうだっていい。三樹が一番に気になっていることといえば……、


(どっちが私の前に座るんだろう……)


三樹の胸は高鳴っていた。手に汗握る状況だ。これは、まるで「学園天国」のような状態である。

今の場合は、相手がクラスでナンバーワンの美女ではなく、職場内でナンバーワンの桐生なのだが。


男性陣は、なんとなく席を譲り合っていたが、やがて桐生がヒガシ君に、

「どうぞ」

と、椅子をすすめた。


今や、三樹は緊張のあまりに顔を上げることすら難しくなっていた。落ち着け、と言われてもムリ。


「あ!すみません!」

ヒガシ君の嬉しそうな声がした。

「やっべ!僕もう、おなかぺこぺこで死にそうだ!」


実に無邪気なことを言いながらヒガシ君が座ったのは、三樹の前だった。


ホッとしたような(桐生が前にいたら、たぶん緊張してしまうだろうから)

ガッカリしたような(桐生の前に座るなんていうシチュエーション滅多にないから)

複雑な気持ちになった。


当然、桐生が座ったのは水沢の前である。水沢が嬉しそうに満面の笑みを浮かべている。それに気がついた桐生も、微笑みを返している。


(やっぱり、若い子の前がいいのね……)

と、思わず遠い目をしそうになった三樹。実際に、ちょっとだけしたかもしれない。


「僕、この店に来るの初めてかもしれないです!町田主任は来たことありますか?」

と、ヒガシ君が楽しそうに話しかけてくる。つられるようにして、三樹も笑顔で応えるしかない。


実際のところ、ヒガシ君がいてくれて、ほんとうに良かった。そうでなかったら、多分、間が持たないだろう。


「桐生さん、何にしますか?」


水沢が、ここぞとばかりに張り切って、桐生にメニューを見せている。


「僕はいいから、水沢さんから、お先にどうぞ」


桐生がジェントルに答える。


「桐生さん。そんな呼び方しなくて良いんですよ。みんな、あたしのこと杏ちゃんって呼んでるんで、桐生さんも、杏ちゃんって呼んで下さい」


(はっ?死ね!)


三樹の心の声がシャウトした。

誰の心にも存在するデスメタルがちょっとだけ炸裂。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ