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計算女!?水沢杏の狙いは……!?
ただ、この出来事のおかげで、三樹の一日は、ウキウキと楽しいものだった。何もかもが許せた。上司のくっだらないオヤジギャグも、水沢のぶりっ子可愛いアピールでさえも。
三樹はまるで少女。カゴを手に、花畑の中を笑いながら駆け回っている感じだ。
「うふふ……小鳥さん、こんにちは。ごきげんよう」的に。
「青い空がステキ。そよ風が頬をなでていくわ♪」的に。
頭の中にお花が咲いている状態のまま、三樹が今日の仕事を終え、そろそろ帰ろうかと支度をしているとき、事件が起きた。
水沢がヒガシ君に何かを言っている。
「え?今日?」
と、ヒガシ君が驚いている。それから、頭をかきながら、困ったように、
「急だな……」
「いいじゃないですか。だって、さっき、とくに予定ないって言ってたでしょ?」
水沢が食い下がっている。
(ヒガシ君の顔みて、困ってるって気づかないんだ……)
(って言うか、誰でもいいのかよ!?)
先ほど、桐生に愛想を振りまいていた水沢だが、今のターゲットはヒガシ君らしい。どんだけ、男にちょっかいをかければ気が済むのだ。若干、面白くない気分になる。
三樹は、われ関せずの振りをしながら、デスク周りを片付けたりしていた。内心、イライラしていた。
(お前には彼氏がいるだろ?学生時代から付き合っているラブラブのダーリンがよぉ)
「ま、そう言ったけどさ……でもさ、急すぎじゃない?……」
ヒガシ君がやんわりと断ろうとしている。
(ダメだっ!ヒガシ君!水沢には、そんなやんわりとした言い方じゃ通じないんだよ!)
(もっと!もっとキッパリと!行きません!って言わないと!)
(まったくもう、ヒガシ君は優しいんだから……)
なんだかんだで、聞き耳を立てている三樹だった。
「でも別に、用事があるわけじゃないじゃないですかぁ。ヒガシ先輩、彼女さんとか、いないんでしょ?」
「それとこれとは、今は関係なくない?」
(そうだっ!ツッコミどころがなんとなくズレている気がしないでもないが、頑張れヒガシ君!)
「じゃ、いいじゃないですかぁ。行きましょう、行きましょう」
水沢がおねだりモードに入った。ヒガシ君の腕をつかんでいる。
「え?しょうがないなぁ……」
ヒガシ君が、ちょっと嬉しそうな笑顔になった。ように、少なくとも、三樹には見えた。
三樹の心が、このときばかりは遠い世界へ旅立った。
「じゃ、決まり!ね!」
水沢がはしゃいだ声をあげた。
「もう、しょうがないなぁ。今回だけだぞ?」
(おいおい、ヒガシ君。ちっとも、しょうがない感じがしないんだけど?)
三樹は用もないのにスマホを取り出していじった。画面を表示させて、何を見るわけでもなく、また画面を消した。
ただ無性にひとりになりたくなってくる。
(みんな消えちゃえ)
「おいおい、ふたりでデートか?」
と、誰かが冷やかす声がする。
「いや!違います!全然そういうんじゃないですから!」
ヒガシ君が慌てている。
(そういう態度をとるから……)
「えー?怪しいなぁ……」
などと、余計なことを言われて、ますますテンパる破目になるのだ。
先輩社員たちにからかわれて、汗をかきながら否定している。
(まぁまぁ、にぎやかなことで。すっかり他人事なんですけどもね)
そこに、爽やかな風のごとくに桐生が現れた。
「お疲れ。なんだか楽しそうだね、デート?」
桐生が若いふたりに声をかけている。
「あ、もう!桐生さんまで……」
ヒガシ君が大げさに落胆している。
「だから、違うって言ってるのに……。っていうか、水沢さんも黙ってないで、何か言ってよ」
残念なことに、水沢の耳には、ヒガシ君の言葉は伝わっていない。明らかに目線が違うところを向いている。
やつの視線は、桐生の顔にロックオンだ。




