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 思い出したらイラッとして、ブラシを持つ手にグッと力が入った。


「痛っ!」


 バリッと音を立てて、髪がからまった。


(どうしたら、こんな摩訶不思議な絡み方をするわけ?)


 イライラしながら、ブラシに絡まった髪をほぐす。……というより、髪の林の中からブラシを救出する感じだ。


(ここなんか、毛先が固結びになってるんですけど。どうしたのこれ?寝てる間にしばった?誰が?わたしが?)


 イライラしながら、ブラシに絡まったそれをほぐしていく。


 もう一度、寝癖直しスプレーをシャーシャーと吹きかける。ほのかなミントの香りが広がる。


 ブラシで髪をときながら、

(髪の毛切ろうかな……)

と、ぼんやり思う。


 いつから切ろうと思っていたのだろう。もう思い出せないくらい、前から思い続けているような気がする。


 三樹の髪は、すごく長い。ほどくと毛ブラ(髪の毛でバストを隠すヌード写真の構図)ができるぐらいに長かった。


(髪の長い女性が私の憧れ!)


(さらっさらの髪を、軽やかに風になびかせて歩くの私!)


(キラキラと、まぶしいぐらいに日差しを跳ね返してステキ!天使の輪ができてるわ!)


とか、そういうことではない。


 ただ切っていないだけなのだ。美容室に電話をして予約をするのが面倒くさくて、先延ばしにしているうちにこうなってしまった。


 しかも、ある程度の長さになってくると、

(束ねてしまえば邪魔にならないから良いや)

っていう色気もへったくれもない境地に達してしまった。


 もっと悪いことに、たいした手入れもしないので、毛先に向かって、見事なまでに傷んでいる。ボッサボサだ。

 ヘアサロンとかのチラシの「こんなひどい痛みもとぅるんとぅるんに♪」のモデルになれそうだ。もちろん「ビフォー・アフター」の「ビフォー」側として。


 寝癖直しウォーターで一瞬の湿り気を与える程度で改善されるような傷みではない。トリートメントとか、ヘアオイルとか、その辺のものをありったけ持ってきやがれ状態だ。


 三樹が髪をほどくとワンレンである。


 風呂上りの三樹は何に似ているかと言えば、テレビの中から出てくるときの貞子である。小さい子が見たら、本気で怖がる。

 実際、甥っ子や姪っ子の前でそれをやるのは禁止されていた。


 一度、本気で怖がられて泣かれたことがあったのだ。いや、大人が見ても、ちょっと気持ち悪い。


 くーるー♪きっとくるー♪


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