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すると、間もなく、ふんわりとしたボブスタイルの、色白で小柄な女の子が笑顔で近づいてきた。今どきの子らしい、流行のメイク。ふんわりとしたチークが印象的だった。
「こんばんはー」
と、やわらかな声で挨拶をしてきた。
(なんて可愛いの?まるで天使……!)
こちらも、つられて笑顔になってしまう。
彼女に連れられて、シャンプー台に向かう間も、なんだか異世界を歩いているみたいで、足元がふわふわした。
あちこちからソフトな声の挨拶が飛んでくる。
それでも、店に入ったばかりのときより、少しは落ち着いてきた。挨拶をしてくれた人に、微笑で頷き返してみたりする。
(なんだか、いい女になっちゃったっぽくない……!?)
今さらだが、店内のBGMも落ち着いていてステキだった。
小柄な彼女の後ろ姿は、なんとなく、さくらに似ていた。一瞬、妹かと思ったが、さくらには弟しかいなかったはずだ。その弟も、さくらとは双子のようにそっくりらしいので、ぜひともご尊顔を拝んでみたいものだと思う。
シャンプー台に横たわり、あおむけになって顔に小さな布をかぶせられた。
「熱かったら仰って下さいねー」
と、やわらかな声が言った。
顔面の上で布をもぞもぞやりながら、「はい」と答える。両手の置き場に困って、とりあえず胸の上で組んでみた。まるで死んじゃった人である。
シャワーは熱すぎず、ちょうどいい気持ちよさだった。しゅっしゅっと、ポンプを押す音がしたと思ったら、三樹の髪の間に、女の子のきゃしゃな指が差し込まれた。
シャンプーのほのかに甘く爽やかな香りが心地いい。
しゃかしゃかと心地よいリズムで洗っていく。これも指の刺激も気持ちよくて、思わず寝落ちそうになった。
とろーん……となる。
「かゆいところとか、ないですか?」
頭の上のほうから、美容師の声がする。一瞬考えて、また顔の上の小さな布をもぞもぞやりながら、
「ないです」
と、答えた。
内心でときめいていた。
(ほんとに聞かれたわ!かゆいところがないか、ほんとうに聞かれたわ!)
あまりにも、美容室に行かな過ぎて、こういう普通のことすら、ことさらに新鮮に感じられるのだった。
気が付きさえすれば、人生とはエンターテイメントの連続らしい。
またシャワーで流される。
「流したりないところとか、ありませんか?」
心の中で、
(足の裏とか?)と答えながら、
「うーん……大丈夫です」と、答えた。
柔らかなタオルでざっと拭かれて、椅子を起こされた。
思わずため息が出る。これだけでも、何やら生まれ変わったような、スッキリした気分になった。
お店の中の照明が、ことさらにキラキラと明るく見える。
「こちらへどうぞ」
と、美容師に連れられて鏡の前に座った。
タオルをかぶった自分が映る。
肩からすっぽりと布をかぶせられて、テルテル坊主のようになった。
店内の照明は明るく、鏡に映った自分も、いつもよりもキレイに見える。三樹はワクワクしてきた。
そんな彼女を座らせたまま、椅子が、ゆっくりと上昇した。
いよいよ、その時が……!




