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怪傑!OLレンジャー☆ごくごく普通の働き女子が迷惑なあいつをこらしめる!  作者: 高山流水(高山シオン)
どうなる?干物女OL三樹の女子力UP大作戦!
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(それにしても……)

鏡に映る自分の頬をまじまじと見つめる。

(これって、ついてることにしていいのかな?)


その頬に、チークが、うっすらついているようではある。チークがついていない側よりも、表情が明るい気がするし、目がパッチリして見えるし、ちょっとかわいくなった気もする。


(これで良いか……?良いね!)


チークを塗り終えると、にこっと鏡に向かって微笑んでみた。


(へたくそ!スマイルへたくそ!)


ふいに脳裡に桐生の顔が浮かんだ。今度はにやけた。その顔が鏡に映っている。呆れる。


(はいはい、出かけましょうかね……)


バッグを持って三樹は立った。


と思ったら、また鏡の前に戻ってきた。髪をチェックした。


(いつもと同じだっての!)


メイクをチェックした。


(いつもよりも少し可愛くできたかも……)


襟元やネックレスをチェックした。ネックレスが大人しめにキラッと光り、たったこれだけで気分が少し上がった。


こんな気持ちになるのは、いつ以来だろうか。とんとご無沙汰だったのには違いない。三樹がこんなことをするのは珍しすぎて雨どころか槍でも降りかねない。

もしも雨だった場合、すんごいゲリラ豪雨になるだろう。それが原因で電車が止まったら困るのは自分だ。


「よしっ」

と、ひとつ頷くと、三樹は玄関に向かった。


(今日は、とっとと仕事を終わらせて髪を切りに行こう!絶対に行こう!)


そんなことを決意しただけなのに、なんだかウキウキしてきた。

駅までの道のりも、いつもよりも足取りが軽かった。

夕べの飲みすぎも気にならない。

ホームの混雑も、座れない電車も苦にはならなかった。


さっそくスマホを取り出して、近所の美容室を探した。たくさんありすぎて、どこが良いんだかちっとも分からない。とりあえず行きやすそうな場所で選ぶことにした。


(えー何これ?意外と遅い時間までやってるんだー。知らなかったー)


これなら、残業さえしなければ間に合いそうだ。一安心だった。


(さて、髪をどうするか)


スマホを片手に、ひとつにまとめた髪の、その毛先を見た。ごまかしようがないほどにボロボロである。もはや、人毛ではなくて化繊のようだ。女子力なさすぎだ。


ふと、同じ車両の若いOLを見て、ガッカリした。

新人らしい初々しさのある彼女は、頬にも張りがあってツヤツヤだし、髪には天使のわっかができていた。すごく薄いメイクしかしていないのに、若さというオーラを身にまとって輝いているのだ。


(同じ人間、同じ女と思えない……)

もう、ため息をつくしかなかった。


三樹は、また自分の髪を見た。ボロッボロに傷みきっている。髪をいじったぐらいで何が変わるんだろう。

ぴちぴちの子を見て意気消沈してしまった様子。なんだこれ、気分の上がり下がりが激しすぎる。雑居ビルのエレベーターか。


「行け!町田三樹!」


いきなり、宿さんの声がよみがえる。


(そうだ、行くんだ!行くしかない!)

(こんなところで足踏みしている場合ではない!自分は変われる……たぶん!)


気が付くと、スマホの画面が黒く沈んでいた。三樹はボタンを押して、予約画面を再び表示させる。


(えぇ!?メニューってこんなにあるの?えー……どうしたらいいのか分からないよう……)

(カラー?考えたこともなかったなぁ……。パーマ?傷んでるのに?っていうか、今、何をするかって決めなくちゃいけないの?)


悩んでいるうちにスマホの画面が消えそうになる。


(よく分からないから、とりあえずカットだけにしとけ!)

(よし!そうと決まったら勢いで予約だ!)


気が付けば手汗がすごい。とっさに、パンツで手汗をぬぐった。大好きなアイドルと握手してもらう前の、ファンのおばちゃんみたいである。

緊張のあまりに震える指先で、メニューの中から「カット」を選び、迷う暇も与えずに「予約」ボタンをタッチ。

ドキドキしながら待つこと数秒、画面がくるっと変わって「予約受付しました」の文字が表示された。


(やれやれ)

小さくため息をついた。

(慣れないことをすると、どっと疲れるなぁ……)

(それにしても、なんて便利なの?電話しなくても予約ができるなんて)


感心している自分が、ひと昔の人みたいだ。

妄想OLとうとう……女子力回復に乗り出す!

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