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宿さんとの楽しい女子会の翌日、少々グロッキーで三樹は目覚めた。
(学生の頃とかは、いくら飲んでも、もっとスッキリと目覚められたのになぁ……)
やはりアラサーだからだろうか。なんとなく、頭がぼんやりする。
ばしゃばしゃと顔を洗い、いい加減にタオルで拭いた。
髪が爆発してメデューサみたいだ。それなら鏡を見た時点で石になってしまって大変だ。
あるいは、実験室コントで大爆発が起きちゃった感じとも言える。ドリフのバカ兄弟みたいな。
(まぁ、いつも通りに寝癖直しスプレーかけて、ブラッシングして、しばるだけだし、いいや……)
(それよりも今日は、ちょっとOLレンジャーのほうを勘弁してもらいたいな。和泉やさくらで片づけてもらえないかな……)
こんなことを考えていたら、急にさくらの言葉が脳裏によみがえった。
「朝の洗顔で、その日のメイクのりが変わるんだよ!そんないい加減にしてたら、絶対に崩れるからね!」
と、いつだったか、さくらが言っていたのだ。
OLレンジャーはプライベートでも仲がいいので、一緒に飲みに行ったり、さくらのマンションに泊りがけで遊びに行ったりしていた。
さくらのマンションは下北沢だし、三樹と和泉は町田に住んでいる。下北沢は、新宿から町田に帰る、その途中にある。まことに都合が良かった。
「いい?洗顔フォームをしっかり泡立ててフワフワにして、やさしく顔を洗って、ぬるま湯でしっかり洗い流したら、冷たい水で引き締めるんだよ。三樹ちゃんはもうアラサーなんだからさー、ちゃんとしなきゃ」
両手を腰にあてて、エラそうにさくらが言う。
最後の一言を聞いた三樹が、
「うるさい!」
と、叩くふりをすると、
「きゃっ!」
とか言って逃げた。そして、あっかんべーをする。
まったく、子供か。
そうは言っても、さくらは化粧品メーカーに勤めているし、化粧品に対する知識と情熱とでは超一流だった。
なんだかんだ言いながらも、三樹は言われた通りに顔を洗ってみた。その様子を、まるで監督みたいな顔をした、さくらが見ている。なんの監督なのかは分からないが。
たしかに、タオルで拭いたあとの肌の感触が違う気がした。ちょっと明るくなったというか。
三樹のあとからやってきた和泉も、同じやり方で顔を洗っていた。タオルで拭き取ったあと、自分の頬を指でつついて真顔で頷いていた。どうやら、納得したらしかった。
乙女の肌は優しくね!




