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「今日の東京のお天気は雨。ところにより、雨脚がかなり強くなりそうですので、大きめの傘を持ってお出かけください♪」
にこやかなお天気お姉さんが、番組のロゴの入ったビニール傘をさして、そう言った。
「今日のお洗濯予報はバツ!洗濯ものは部屋干しにしてくださいね!」
そんなことを言われなくても、この土砂降りの中に、あえて洗濯物を干そうとするツワモノはいない。おそらく、この状態で干されている洗濯物があるとしたら、それは昨日からずっと干しっぱなしだったのだ。
朝には乾くだろうから、そのときに取り込もう。それでいーじゃん。……と思って、雨に降られちゃったパターンだ。
今日の三樹のように。
ちなみに。こんなことを書くと蛇足になるかもしれないが、三樹が洗濯をしたのは昨日ではない。
一昨日だ。
その間、どこかで外泊をするなどのやむを得ない情事……もとい、事情があった……わけではない。ただ、取り込むのが億劫だっただけという、色気とは無縁の話だ。とても残念な話だ。
一昨日の夜に洗濯物を干した。その時の彼女は、
(ま、明日には乾くだろうから)
と、気楽に考えていた。
朝が来た。生乾きだった。仕方がないから、帰ってから取り込もうと思った。
いざ、仕事を終えて帰ってみると、すっかり疲れてしまって何もする気にならない。
ベランダに揺れる洗濯物を、見て見ぬふりをする。
だって、洗濯物を取り込んだら畳まなくてはいけない。
畳み終わったら仕舞わなくてはいけない。
それなら、いっそのこと、今は取り込まなければいい。なんて素晴らしいアイデアなのかしら!……
という、ぐうたらな論法だ。何気なく空を見て、自分に言い聞かせる。
(今、取り込まなくても大丈夫だろう……)
今日は天気も良かったし、夕焼けもきれいだった。それが突然に崩れるとも思えない。今日はちょっとくたびれているから、しっかりと休んで、リフレッシュして明日の朝に取り込めばいい。
何事にしても、ムリはよくない。うんうん、と自らの考えを肯定するべく、数回うなづく。
そして、安らかに眠った。
ちょっと待て、どこかに雨の前兆がないか?気が付け。もしもーし。いい夢を見て、にやけている場合じゃないだろうが。