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第七話 舐めるなよ人間

「何を言っておるのじゃ、父上が負けるわけがなかろう!」


 リリスが喚く。

 俺が負ける方がありえねえよ、と50年も封印されていたことは置いておいて考える。


「魔族なら使い魔にでもするか」


 杖を回し、リリスを見ながら言う。

 魔王の娘ならそこそこ使える使い魔になるだろう。


「おい!話を聞け!」


 ジタバタと拘束された体のままリリスがもがく。


「なんでアンジュは人間だと勘違いして、俺は魔王の部下なんだ」


「悪人顔だからじゃないですか?」


 ぼやくとアンジュが言った。

 おい、それは普通に悪口だからな。

 目つきが悪いこと、気にしてるんだぞ。


「ちょうど使い魔が欲しかったんだ。魔物が居ない世界だと補充できないしな」


 サラマンダーも毒蜘蛛も、魔王との戦いで死んでしまった。

 大体3,4回の戦闘で死んでいった使い魔たちの中で、数十回の戦闘に耐え抜いたお気に入りたちだった。

 

「私を使い魔にしてくださってもいいですよ?」


 アンジュが手を上げアピールする。

 もう契約の魔法をかけてるから、使い魔みたいなものだけどな。


「話を聞けと、言っておろうが!!」


 バチン、と閃光が走った。

 拘束の魔法を解き、怒りで髪を逆立たせたリリスが棺の上に浮かんでいた。


「わらわを使い魔に?人間風情が図に乗るなよ」


「おお、結構魔力が強いな」

 

 俺は素直に感嘆の声を上げた。

 この少女は強力な使い魔になるだろう。

 背中から翼を生やし、口元から牙を生やし、指先から巨大な爪を生やしたリリスは、さっきまで棺の中ですまし顔で眠っていた少女とは別人のようだ。



「舐めるなよ人間。魔族最高の血統を継ぐこのリリスの力、思い知らせてやるわ!」


 リリスとの戦闘が始まった。

 リリスが魔法弾を放ってくる。


 目の前にシールドを張り防ぐ。

 シールドに当たった魔法弾が弾けて煙がモクモクと上がった。


 魔法の熱量を吸った空気が一気に温度をあげる。

 さっきまでひんやりと涼しかった地下室が熱を帯び、じんわりと汗が出てくる。


 暑いな、地下は熱がこもる。

 

 しばらくシールドの後ろにいると、痺れを切らしたリリスが翼をはためかせ上から爪を振り下ろしてきた。


 シールドが爪で割かれ、破られる。

 後ろに飛び退いて爪を避け、シールドを張りながら逃げる。


 使い魔にするなら、どんな能力を持っているか知りたい。

 リリスに気づかれないようにリリスの魔力を回復させ、ただ攻撃を防ぐことに徹する。


「ふふふ、力がみなぎってくるわ!」


 リリスは楽しそうに牙や爪を振るってくる。

 そりゃあみなぎるだろうよ、俺が回復してるんだから。


 見たところ、爪と牙の物理攻撃と、背後に出現させた魔法陣から繰り出す魔法弾が主な攻撃手段らしい。 


「ぐぇっ。」


 潰されたカエルのような声を上げ、リリスの魔法弾を食らったアンジュが倒れた。

 また死にかけるのかよ、飽きないな。


「なんじゃ、避けるばかりではないか!わらわの力に恐れをなしたか人間!」


 リリスが爪を魔法で伸ばして襲ってきた。

 動きが早い。


 杖で斬撃を弾きながら後退する。

 とうとう壁際まで追い込まれてしまった。


「これでおしまいじゃ。わらわを愚弄した罪、死をもって償え!」


 リリスが両腕をいっぱいに後ろに向かって伸ばし、体を仰け反らせる。


 そのまま反動も使ってバツ印を描くように腕を振り下ろした。

 壁に追い込まれた俺を斬撃が襲う。


「死ぬのはゴメンだな」


 魔法を使ってリリスの後ろに瞬間移動した。

 空振りしたリリスは勢いのまま空中で前転し、壁に頭をぶつける。

 ゴチンと石と石がぶつけたような重量感のある音が響く。


「馬鹿にしおって…!」


 リリスはすぐに翼で体勢を立て直してまた爪を振るってきた。

 爪、牙、魔法弾、どれも強力だが、段々とリリスの攻撃が単調になってきた。


 魔王の娘なら、魔王が使っていたような必殺技も使えるんじゃないか。


 たしか魔王は角と角の間からレーザー光線を出していた。

 10枚重ねてはったシールドが一瞬で破られた。


 このまま攻撃を避け続けても新しい技は出てこなそうだ、と判断した俺は、リリスを煽ることにした。


「なあ、魔王の娘、なぜ魔族でもない俺たちがこの地下室にいるか、疑問に思わないか?」


「お主を殺した後でゆっくり確かめるわ!」


「自己紹介の時に言ったのに、もう忘れたのかい?魔王は勇者に倒された!お前の父親はもう死んだ!」


 リリスの放つ魔法弾の量が増える。

 しかし何発かは見当違いの方向に飛んでいく。

 精密だったコントロールは失われ、無駄撃ちも多くなった。


「たわけ!父上が、人間ごときに殺られる訳なかろう!」


 動揺するリリスを見ていると笑いが込み上げそうになる。


「ならなぜ今お前を助けに来ない?番犬も粉々になってる!」


 リリスがただの金属の塊となったケルベロスを見た。

 それは…、と口ごもる。


「お前の親父の死に様、笑えたぜ!最後は魔力が切れて魔法が使えなくなってよ。血をダラダラ流しながらゾンビみたいに殴りかかってきた!」


「黙れ!」


「お前の攻撃も俺に掠りもしてない。あの親にしてこの子ありってな!」


「…調子に乗るなよ、人間」


 リリスは煽りに乗ってくれたらしい。

 魔王の必殺技の前ぶりのように、角が赤く光りだした。

 角が脈打ち、ドクドクと血液が流れ出る様な音が響く。


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