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第1話「忘れぬ日」
「早く! 逃げろ!」
その声が街中に響く。街の入り口からは武装をした人々が流れ込み、無差別に切りつけていく。街には炎が放たれ、瞬く間に炎の海になった。
逃げ惑うもの、神に祈るもの、逃げるのを諦めたもの、泣き叫ぶもの。その光景は、まさに文字通りの地獄絵図だった。
熱い……痛い……暗い……
いやだ……死にたくない……誰か……
「誰か……助け……て」
少年の声は、街の悲鳴に掻き消された。
「おい! 建物が崩れるぞ!」
微かに聞こえる男の声。その瞬間、少年の上には更に大きな瓦礫が積もった。少年は最後の力を振り絞り、叫んだ。
「死にたくない……!」
その時、目が見えなくなるほどの光が少年を包んでいた。