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日照時間が短くなる十一月から一月は平日練習が午後5時までとなる。
そこでその後に日曜日組として卓球をやりに行くこともあった。近くにあるバッティングセンターの二階の卓球場には六年生の昇平や三年生のみひろのほか、元気な真知の姿もあった。
十二月の第一日曜日は朝から昼まで大東SC恒例の親子サッカー大会が開催される。朝早くから子どもたちも親たちも気合い満々で小学校のグラウンドにやってくる。
午前八時、監督の話のあと、リフティング回数の表彰式で親子サッカー大会が開幕する。
チーム推奨のリフティング。監督と家族ぐるみの付き合いをしているママさんの子どもはリフティングを頑張っていて、千回を越す子もいた。
しかし、僕はリフティングに否定的で、みひろたちにリフティングをやらせることはなかった。サッカーの延長線上にリフティングがあるのであって、リフティングの延長線上にサッカーがあるのではない。Jリーガーがリフティングパフォーマーになれることはあっても、リフティングパフォーマーがJリーガーになれるわけではない。
野球と違ってサッカーは数値で能力を表すことが難しいがゆえに、リフティングの数値に飛びつく気持ちは分かる。
でも千回リフティングができても、試合で中心選手になれていないと気づいた瞬間、リフティングの努力に虚しさを感じることだろう。そんな虚しい努力をみひろたちにさせる必要性を全く感じなかった。
実際、今回表彰された二人は中学ではバスケ部と陸上部へ入ることになる。それがすべてを物語っているといえるのではないだろうか。
親子サッカー大会は、メインコートで各学年vsその保護者の試合が一年生から順に行われ、サブコートではメインコートの試合以外の学年とその保護者によるフットサルが行われる。
メインコートでは、一年生vs保護者が始まった。僕と山下コーチが一年生チームに加わり、山下コーチがキーパーをやることになった。
一年生たちは大人たちの配慮に全く気づくことなく、まるで自分の実力と言わんばかりにプレーしていく。その一部始終を温かく見守るママたちを抜いてシュートしたボールがゴールに入った。一年生たちは無邪気に喜び、みんなで喜びを分かち合っていた。
二年生悠李チームvs保護者、三年生みひろチームvs保護者と続いていく。僕は両試合とも保護者チームに入った。僕がボールを持つと果敢に挑戦してくる子どもたち。僕を止めたら金星だという思いで喜んで寄ってくる。
逆にドリブルマニアの三年生なほは、あえて僕にドリブルを仕掛けてくる。僕を抜くために必死だ。
僕は、日曜日練習でも平日練習でも、ミニゲームにはほとんど参加しないので、みんなここぞとばかりに勝負を仕掛けてくるのだ。僕は子ども相手でも手は抜かない。だから子どもたちも本気だ。
四年生チーム、五年生チームの試合時間はみひろチーム、悠李チームとフットサルをしたり、休憩をしたりし、六年生昇平チームとの戦いでは率先して保護者チームのフォワードに入った。
まだまだ六年生チームには負けられない。右サイドをドリブルで駆け上がると六年生の左サイドバックが寄ってくる。そこでカズのようにシザースフェイントを見せる。はっきりいってスピードで抜けるが、それでは見ている保護者たちや子どもたちが喜ばない。「オーツ!」というどよめきを聞くためにプレーしているのだから、喜ばせなければ意味がない。
一番歓声が大きかったのは、コーチチームのディフェンスから大きく蹴り出されたボールを、攻めるゴールを背にしたまま、シューズのアウトサイドを使って逆サイドのフォワードの前に大きく蹴るテクニックだ。ボールを左斜め後ろに大きく蹴るのはかなり不思議に見えるはずで、みんなの想像を超えているはずだ。しかも、そのボールが落ちる場に仲間がいなければ、ただのキックミスに見えてしまう。そこまで見える広い視野がないと成功しない。
得点は一点だけ入れさせてもらったら、あとは空気をよんでシュートは遠慮する。残りの時間はセンターフォワードとして張っている監督へのアシストか、一緒にプレーしているママさんに優しいパスを出すことに集中し、楽しいサッカーを追求する。試合後、みひろたちの元へ戻ると「コーチー、ナイスシュート!うまかったね!」と祝福され、それが一番うれしかった。
メイングランドでは一年生からもう一周試合を行って、ちょうどお昼となる。お昼のためにお当番さんのママたちが作ってくれた豚汁をみんなで食べる。
学年ごとに集まって食べる必要はないのだが、みひろチームの子どもたちは競って僕の周りに集まってくる。遠征前のお昼と全く変わらない光景だ。隣りにはいつもみひろ、あきと、真知がいる。
みひろ食い。みひろはおにぎりを食べる時、口いっぱいに詰め込みハムスターのようなほっぺをしながら食べるので、そう名付けてみんなで笑い合いながら食事をした。
朝は吐く息が白くジャージが手離せなかった気候も、豚汁タイムの頃にはぽかぽか陽気となり、グランドにいるすべての人たちを温かさが包み込んでいた。




