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①-13

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 一月下旬に始まるトーナメント戦、スポーツ少年団交歓会、通称スポ少に向けて、子どもたち、ママさんたち、コーチたちの気持ちは高まっていた。去年の後期リーグで、最下位リーグながら優勝したからだ。

「一回戦は藤川FC戦だ。藤川FCは強いチームだけど、勝てるように頑張ろう!」

「よっしゃー。絶対に勝つ!」

 僕とコンビを組む山下コーチは、僕よりも十二歳も年上なのに僕に対してはいつも丁寧語で話してくれる。

「この前のリーグ戦では、試合前に村山公園で練習してエンジンをかけてから試合に臨んだのが、いい結果に繋がったんじゃないかと思うんです。だから、今回もそうした方がいいんじゃないかと思いまして」

 この提案を受け、試合会場近くの運動公園で練習してから会場に乗り込むことになった。

 試合当日の朝。一月のわりに心から冷える寒さではない。ずっと曇っているのが原因なのかもしれない。予定通り、みひろ組は運動公園でのウォーミングアップを終え、会場の小学校に到着した。

 いよいよ始まる藤川FC戦。後期リーグ戦で一度も負けなかったことからきている‘イケる!’という思い。今までのジンクス通り、ウォーミングアップしたのだからという安堵。

 みひろたちに試合準備をさせていると、遠くから駆け寄る黒服の男。レフリーだ。

「あの~大東さん、本部にメンバー表をまだ出していないですよね?」

「あっ、しまった!」

 公式戦では原則としてメンバー表を提出しなければならない。後期リーグ戦ではメンバー表を提出しなかった。それは、会場校の裁量によるものだったのだ。

 カイのお母さん、といってもまだ女子大生でも通用するような美貌のカイママと二人でメンバー表を書き上げたのが試合開始一分前。みひろたちはすでにグランドに向かい一列に並んでいる。キャプテンマークを巻いてあげたみひろが藤川FCキャプテンとコイントスの行方を見守っている。みひろたちに力を与えてあげる言葉をかける間もなくキックオフとなってしまった。

 試合の結果は前半0-2、後半0-2で合計0-4の惨敗だった。

 あとでみひろのお母さんから聞いて初めて知ったのだが、藤川FC戦前日、みひろは高熱を出しており、試合当日も最悪な体調だったらしい。そんな素振りを全く見せず、四十分間闘い続けたみひろ。

「もし試合前に知られたら、きっと試合に出してもらえないだろう」

 みひろはそう思ったに違いない。もちろん事前に知っていたら試合に出さなかったと思う。それよりもみひろの体調不良に全く気付かなかった自分自身にショックを受けた。いつも通り、僕の車の助手席にみひろは座っていたし、キャプテンマークを巻いてあげる時だって何度も気づくチャンスはあった。

 確かに、藤川FC戦でのみひろの動きは良くなかった。相手の動きについていけず、失点に貢献していた。でも、体調不良にまで思いが及ばなかった。

みひろママから事前に連絡をもらえなかったことも残念だったが、みひろママはみひろの想いを最優先に考えるママなので、それは仕方ないことだった。

 もしみひろの体調が万全だったら、0-4はなかったかもしれない。しかしながら勝てたとは残念ながら思えない。圧倒的な技術の差があることは前半早々にすぐに感じた。だから、試合中はみひろたちに声をかけることもなくウチの子たちと藤川FCの子たちとの違いを真剣に探した。

 その結果、藤川FCの中心選手となっている子たちの動きに共通したものを発見した。

 大東SCの子がドリブルでボールを運んでいると、藤川FCの子が並走を始め両者の肩が触れる。次の瞬間、藤川FCの子が大東の子の走るコースにスッと入り、ボール支配権が移るのだ。

「ここまで運んでくれてありがとな。あとは俺が運ぶからもういいよ」と言わんばかりにボールを持つ子が見事に入れ替わる。他チームには相手を手で押し強引にどかしてボールを奪う子はいるが、藤川FCの子たちのプレーは自然で、相手を押しているわけでもないのでファールではない。

 これを大東SCの子どもたちに身に付けさせない手はない。次の練習からは体の入れ方を徹底的に練習していくことにした。それとともに、この日からチームのキャッチフレーズが「打倒!藤川FC!」となった。

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