北風と太陽とその他
太陽はあたたかな光を放ち、北風は冷たく吹いていました。まるで逆の性質を持った二人でしたが、ある日北風と太陽は賭けをしました。
「どちらが人間を家から出させるか勝負だ」
「いいだろう、受けて立つ」
北風も太陽も人間よりもずっと長い時間を生きていて人間と違って時間だけはたくさんあったので、二人を暇を持て余していたのでした。
「まずは俺だ!」
北風が思いきり息を吸い込み、勢いよく吹きかけます。
しかし、人間の家はびくともしません。現代技術によって作られた家屋は台風や嵐でも来ない限り倒れることはありません。
「今度は私」
いつも明るい太陽がさらに熱量をもって輝きます。
しかし、人間たちは家から出てきません。
聞き耳を立てると人間たちの声が聞こえてきます。
「いやあ、クーラーがあるからこんな暑い日でも快適だね」
「アイスもあるわよ~」
「ぼくハーゲンダッ○ね」
なんということでしょう。どんなに暑くしても家の中にいる人間はクーラーで快適に過ごしているのです。
突風が吹いても家はびくともしません。
気温が上がっても家の中は快適です。
北風も太陽も人間たちを家から外に出すことはできません。
しかし突然人間たちは家から外に出てきました。まるで逃げ出すように。
「まさか、俺の力か!?」
「いやいや、私でしょう!?」
残念ながら人間たちを家から引きずり出したのは北風でも太陽でもありませんでした。
「ゴキブリだーーーー!」
人間を動かしたのは北風でも太陽でもなくゴキブリでした。