第二十二話
これだけの武具など、いったいどこから出してきたのだろうかと思いながら、清盛は父を探していた。
厩舎の近くで鎧の数を調べている忠盛を見つけ、清盛の心臓は勢いよく脈打った。
「父上」
忠盛が、振りかえる。
「俺も・・・」
ガラにもなく震える声を抑え込み、清盛は言った。
「俺も、お供させてください」
「好きにしろ」
素っ気ない、父の言葉。
だが、清盛は満足だった。
たった二言三言の会話が、彼の心を温かなものにしてくれるのだ。
「家盛様」
部屋に入ってきたのは、鷲尾維綱であった。
「清盛殿が西国へ従軍されるという話し、聞かれましたか」
「ああ」
家盛は走らせていた筆を置いた。
「鷲尾」
「はっ」
「支度をいたせ。父上のお供をする」
「し、しかし」
鷲尾はためらった。
彼は家盛の乳父だ。
乳呑み児の頃から仕えている。
この少年が、船による旅などに耐えられるのであろうか。
鷲尾は家盛の白い、いや蒼い顔を見た。
このお方に長旅に耐えられるだけの体力などない。
「なあ鷲尾。おぬしは私の乳父だろう?私の性格はわかっているはずだ」
家盛は立ち上がった。
「兄上に遅れをとるわけにはいかぬのだ」