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落日――日本国自衛隊vs大日本帝国陸海軍――  作者: 河畑濤士
【後】『天皇作戦』/『落日作戦』
22/22

22.日本国自衛隊vs帝国陸海軍――日の出ずる国――

 B-2ステルス爆撃機の核攻撃により、関東地方の死霊が殲滅された翌日。

 鹿児島県南方沖にて、戦艦大和・武蔵を中心とする大日本帝国海軍連合艦隊と、佐世保の第2護衛隊・第8護衛隊を中核とする護衛艦隊が激突しようとしていた。さらにタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦『チャンセラーズビル』やロスアンゼルス級原子力潜水艦等、米海軍第7艦隊の生き残りが参戦。死者たちは過去の復讐のために、生者たちは明日を勝ち取るために、21世紀最大の海戦を戦う。


「対空戦闘用意」


 前哨戦は『赤城』『加賀』『飛龍』『蒼龍』『翔鶴』『瑞鶴』を初めとする航空母艦から発艦した艦載機の群れと、イージスシステムを搭載した護衛艦やミサイル艦の対空戦闘。

 こんごう型護衛艦『ちょうかい』、あたご型護衛艦『あしがら』、タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦『チャンセラーズビル』、同級『アンティータム』が次々とスタンダード艦対空ミサイルを発射し、レシプロ艦載機を容赦なく粉砕していく。さらにイージス艦が撃ち洩らした敵機は、長射程の艦対空ミサイルを装備している他の艦艇が迎撃していく。

 完封だった。あまりにも一方的な展開――帝国海軍連合艦隊の先制攻撃は、日米連合艦隊にいっさいダメージを与えることは出来なかった。


「方位、マーク」「セット」「シュート」「ファイア!」


 さらに海面下では待ち伏せしていた帝国海軍潜水艦は、米第7艦隊所属の原子力潜水艦と第1潜水隊群の潜水艦により無抵抗のまま駆逐された。呆気ないように思えるが、第2次世界大戦時の潜水艦は、潜航する敵潜水艦を攻撃することは出来ない。


「SSM戦はじめ」


 護衛艦が一糸乱れぬ艦隊運動で、帝国海軍連合艦隊に脇腹を向ける――と同時に、各艦のランチャーが橙色の火焔を吐き、必殺の艦対艦ミサイルを発射した。

 これに対して、連合艦隊側には抵抗する手段などない。

 亜音速の弾体に突っ込まれた駆逐艦は艦体を切断され、あるいは爆発を起こしながら轟沈。重巡洋艦や巡洋戦艦も1発、2発と直撃弾を浴びて、瀕死の姿となる。航空母艦は言うに及ばず。艦対艦ミサイルに突っ込まれた『加賀』は次の瞬間、飛行甲板が爆風で噴き飛び、艦腹から火焔を噴く。

 この護衛艦隊側の斉射により、帝国海軍連合艦隊は攻撃力のほとんどを喪失した、と言っていい。主力戦艦の王者、戦艦大和と武蔵は致命的ダメージを免れていたが、艦上構造物が滅茶苦茶に破壊されてしまい、その強力な火力を振るうことはもう出来そうになかった。

 一方的な展開。

 帝国海軍連合艦隊の艦艇は一方的に弾雨を浴び、火を噴き、水底に沈んでいく。嬲り殺しだった。F-2戦闘機の群れが空対艦ミサイルを放ち、水中に潜む潜水艦が対艦ミサイルと長魚雷を発射する。直撃、直撃、直撃――精密な誘導装置を備えた現代兵器は、容赦なく半世紀前の艦艇から、装甲板をむしりとっていく。


 半世紀前は確かに世界最強であった艦隊は、戦後復興を遂げた日本国の威力の前に、呆気なく消滅した。


◇◆◇


 生者と死者の絶滅戦争は、こうして終わった。

 天皇陛下のお言葉により多くの死兵が消滅し、さらに残った人外悪鬼の群れは、米第3艦隊の来援により容赦なく掃討された。


 この戦争の勝者は、間違いなく日本国である。

 が、しかし、日本国が被った損害は未曾有の規模となった。


 沖縄本島の死者・行方不明者は約131万名。さらに核攻撃と放射性降下物により島内の大半が死の廃墟と化した。

 南九州はメルトダウンを起こした川内原発により、毎時1-10シーベルトという深刻な放射能汚染に見舞われ、鹿児島県・宮崎県・熊本県民は北九州へ全面避難することを余儀なくされた。当然、避難民が元の生活へ戻る目途はついていない。

 中国・四国地方は艦載機による大空襲と超ド級戦艦の艦砲射撃により、人口密集地・工業地帯を中心に大被害が出た。死者・行方不明者は25万4000名。

 中部地方は幸いにも被害は軽微で住んだが、浜岡原発では使用済み核燃料格納プールが損傷しており、予断を許さない。

 関東地方の死者・行方不明者は500万から600万。核攻撃を受けた東京都心・千葉県北西部・神奈川県東部では深刻な放射能汚染が広がっており、復興の目途は立っていない。


 結局、この戦争はなんだったのか――死者の軍隊が現れた原因を含め、このあと生者たちは議論を重ねていく。


 そしてこの日本列島にしがみついて、生きていく。

 所詮、我々は日本人だ。中にはすぐに海外で順応できる者もいるだろうが、多くの日本人にとって自分の出自、郷土を捨てて生きていくことは難しい。放射能汚染と焦土に塗れ、物流も経済も政府も消滅したとしても、日本列島は我々の故郷であり、生活の場には変わりない。


 生きていれば、残っていれば、進み続ければ、もう一度日が昇ることもあろう。


『落日――日本国自衛隊vs大日本帝国陸海軍――』、完。

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