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落日――日本国自衛隊vs大日本帝国陸海軍――  作者: 河畑濤士
【後】『天皇作戦』/『落日作戦』
20/22

20.日本国自衛隊vs帝国陸海軍――陸海空総攻撃――

 第1戦車大隊第2中隊――重量38トンを誇る鋼鉄の獣の群れが、放置車輌を踏み潰しながら、井の頭通り(都道413号線)を東進する。世田谷区に集結した彼ら第1戦車大隊と普通科教導連隊に与えられた任務は、渋谷区代々木公園とその周辺に存在する敵武装勢力を攻撃し、通常戦力による攻勢を偽装することである。

 渋谷区に進出して以降、しばらく微弱な抵抗しか受けなかった第1戦車大隊と普通科教導連隊だが、代々木公園交番前の交差点に達した途端に、敵地上戦力からの激しい十字砲火に晒された。

 代々木公園内に配置された1式機動47mm速射砲が立て続けに火を噴き、待ち構えていた97式中戦車数両が交差点に侵入した好餌へと砲撃を浴びせかける。すでに交差点に照準を合わせていた迫撃砲が砲弾を撃ち出し、さらに機関銃弾と小銃弾が雨霰と弾き出された。

 だが交差点に侵入した鋼鉄の怪物は、その弾雨を弾き返した。

 そして日本国産74式戦車の105mmライフル戦車砲が、咆哮する。唸り声を上げながら殺到する砲弾は、瞬く間に97式中戦車を撃破し、速射砲や重機関銃陣地を沈黙させていく。それでも死霊たちは、怯むことなく火線を放ち続ける。鋼鉄と鋼鉄の我慢比べがはじまった。

 陸自側も無傷とはいかない。至近で迫撃砲弾が炸裂、覆帯が切断されて転輪が損傷してしまい、擱座の憂き目に遭う74式戦車が現れた。さらに肉攻班――対戦車地雷を抱えた歩兵たちの突進がはじまり、後続の普通科教導連隊がこれを必死に阻止する。

 上空に航空爆弾を抱えた爆撃機が進入して来たが、間髪入れずに後方の第1高射特科大隊が近SAMでこれを撃墜し、入れ替わりに空自のジェット戦闘機と陸自の対戦車ヘリが姿を現す。


「来たか、金食い虫」


 AH-64Dロングボウアパッチが、代々木公園周辺の敵を一方的に蹂躙した。生きている敵火点に対し、手当たり次第に30mm機関砲弾を浴びせ、ハイドラ70ロケット弾を発射する。さらに手持ちのヘルファイア対戦車ミサイルを偽装して隠れていた97式中戦車や、敵歩兵が隠れる建造物へと叩き込み、瞬く間に第1戦車大隊と普通科教導連隊の前方に居合わせた敵を制圧してしまった。

 単価数十億から200億する究極の殺人兵器は、手持ちの火器を撃ち終えると、敵航空機の反撃がない内に退避する。その下を第1戦車大隊と普通科教導連隊が駆け、いよいよ代々木公園内へと侵入した。

 このように、東京都心の戦いに参加した陸自部隊――東部方面隊の全戦力と中央即応集団、富士教導団は、敵前線部隊に対して一挙攻勢へ出た。本命は米軍の核攻撃。その本命の存在を隠すための一大陽動作戦である。


「SSM戦用意」


 東京都心で激しい攻防戦が繰り広げる最中、東京湾でも再び鋼鉄の乙女による決闘が始まろうとしていた。浦賀水道の南方に待機した海自護衛艦隊は、こんごう型護衛艦『こんごう』を中心とする第5護衛隊、先の横須賀攻撃の際に難を逃れたこんごう型護衛艦『きりしま』をはじめとする第6護衛隊である。


「SSM戦、攻撃はじめ」

「SSM、1番から4番まで発射」


 第5・6護衛隊8隻から成る艦隊が放ったのは、計32本の艦対艦ミサイル。時速約1000kmで空翔ける戦槍を、帝国海軍連合艦隊は濃密な対空防御で迎え撃つ。が、レーダーに完全管制されているわけでもなく、現代の速射砲もない彼らに、艦対艦ミサイルを撃ち落とすなど、不可能に近かった。

 機関砲弾がまぐれ当たりして1本が空中爆発、ミサイルから艦を守ろうとするレシプロ艦載機による空対空特攻により、8本が破壊されたものの、残る23の艦対艦ミサイルは真っ直ぐに帝国海軍水上艦へと突入した。

 完璧な先制攻撃。ミサイルが装甲板を貫徹して炸裂すると、駆逐艦や軽巡洋艦は爆焔を噴き上げながら真っ二つに折れて轟沈。重巡洋艦は流石に一撃で沈むことはなかったが、艦上構造物が吹き飛んで戦闘力を著しく減じた。また戦艦長門の右舷中腹にも1発の艦対艦ミサイルが命中したものの、装甲板を破れないまま、致命傷には至らなかった。

 だが、これでいい。

 帝国海軍連合艦隊は新たな水上艦の出現に反応し、全砲門を陸から水上目標へと指向する。戦艦長門も護衛艦隊を撃破すべく、41cm連装砲を旋回させはじめる――それが海上自衛隊護衛艦隊の狙いであった。帝国陸海軍が核爆弾を搭載したB-2ステルス爆撃機を迎撃出来るとすれば、それは戦艦長門の41cm連装砲による艦対空核攻撃しかあり得ない。

 そのため海自の水上艦は、わざわざ戦艦長門の41cm連装砲の射程圏内に入り、決死の陽動に出たのであった。

 第5、第6護衛隊は変針し、回避運動を取る。続々と周辺に砲弾が落着し、巨大な水柱が続々と立つ。が、挟叉弾や至近弾はない。このとき護衛艦の海自将兵は、誰もが作戦の成功を確信した。すでに東京湾内の帝国海軍潜水艦を駆逐、海中に潜伏しながら、潜望鏡で敵情を窺うおやしお型潜水艦『せとしお』からは、戦艦長門の砲門が護衛艦隊へ指向されている旨が報告されていた。

 帝国海軍水上艦の砲撃よりも、殺到してくるレシプロ艦載機に対する艦対空戦闘に必死になりながら、8隻の護衛艦はその時を待つ――。


――そして、漆黒の翼が東京上空に出現した。

あと2話で完結する予定です。ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。完結まであと僅かですが、よろしくお願いいたします!

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