四章
津田の松原はとても美しい。
僕のお気に入りの場所だ。
幼少期は月に何度も通っていた。
最近では学業などで忙しかった為足が遠のいていたが暇を見つけては通っている。
日本の渚100選にも選ばれた絶景なのだが、僕にはそれ以上に魅力を感じるものがある。
具体的に何が魅力なのかと聞かれると返答に困るのだが、何か懐かしさのようなものだ。
砂浜に座り波の音を聞きいているだけで、嫌なことを忘れられていられたのだ。
彼女の家を出た後、僕は自然と津田の海に来ていた。自分の真意を告白できなかった悔しさや、彼女と離れ離れになってしまうという辛い現実から逃げたかったのだ。
彼女と一緒にいた時間は僕が僕の人生の中で1番楽しかった記憶だと思う。
彼女の告白を聞いた時僕には人の「スキ」という感情や「愛」や「恋」という文字の意味がわかっていなかった。今でもわかっていない。
ただ一つだけわかったものがある。
それは僕の彼女といたいという気持ちだ。
今日家に行った理由はそれを伝えようと思って行ったというのもある。
彼女の衝撃的な一言によって言わずじまいになってしまったが、明日また家に行って伝えようと思う。
付き合ってほしいと
なんて考えている間に津田の海は薄暗くその中に夕焼けが海に映り幻想的な景色になっていた。
空を見上げると星が見えた。
空は曇り一つない星を見るのに最高の状態であった。
次の日、僕は再び彼女の家を訪ねた。
昨日と同じように妹さんが応対してくれた。
「山本です。波子さんはご在宅でしょうか?」
昨日と同じ台詞を言う。
「とりあえず上がってください。」
妹さんの昨日とは違った言い方に違和感を感じながらも家に上がった。
家に上がった後連れていかれたのは昨日とは違う部屋だった。
おそらく妹さんの部屋なのだろう。
僕が困惑して立っていると、彼女が話し始めた。
「姉は...昨日病状が悪化し救急車で運ばれました。病院で少し回復したものの今は東京の病院に送られていると言う状況です。」
衝撃が走った。
昨日はあんなに明るい笑顔を僕に降りそそいでくれた波子さんがそんなに悪い状態だったなんて信じられなかった。」
「姉にこの話はするなと止められていましたが、こうなっては仕方ないでしょう。」
「あなたにお教えします、姉の秘密を。」




