トイ月イチ日
朝から昼にかけてのこと。
オオイバラへ至るまでの街道で、マウ一行は数体のスライムとリザードマンに出くわした。
ツネツキがマウへ「見逃した魔物は近くの村を襲いに行くだろうねえ」と進言したこともあり、本日は魔物を見つける度に馬を止め、それらを屠って進んだ。
スライムはワンダが炎玉で焼き、リザードマンはワンダの雷で意識を逸らした隙を残りの三人が突いて倒した。
リザードマンはなかなかの強敵だ。こちらも不安だったのだが、集団で現れなかったことが功を奏してか、難なく片付けることができた。ワンダの功績も大きいだろう。
オオイバラへは昼過ぎに到着した。
街の中ならば魔物に襲われる心配もない。マウ達も今日はオオイバラに宿泊とのことだったので、俺も安心して食料や火薬の補給を行った。
夜は食堂へ行き、久しぶりにまともな飯を食った。
オオイバラはシロ河に近い街だ。魚が新鮮で旨い。
折角なので今の時期にしか取れない、ドラゴンとのハイブリッド魚、ドラダイとドラクエを食った。食感は魚そのものなのだが、肉の旨味も感じられる、大層美味だった。
厨房のおばちゃんから「兄ちゃん、良い食いっぷりだねえ」と牛の腸詰めを何本か追加されたのも嬉しかった。もう30も半ばなのだが、「兄ちゃん」とはな。剣の腕が鈍ってはまずいので、酒はやめておいた。
とはいえ、食事には思いのほか金がかかった(後で確認すると、ドラクエの値段がドラダイの3倍ほどだった)。
旅はまだ長いのだ。節約しなければ、シンへ辿り着く前に手持ちの金が尽きてしまう。今後は食堂へ行くにしても安い料理を選ぶこととしよう。
風呂には入りたかったので、オオイバラで一番安い宿を探して入った。
なんだかんだで湯に浸かるのは4日ぶりだろうか。疲れが些か取れたような気がする。
風呂へ入って夜も更けてくると、ツネツキから他の3人が眠ってしまったとの連絡があったので、あちらの宿へ出向いた。
マウ一行の宿は、宿泊代が俺の宿の10倍はかかりそうなほど豪華だった。
入り口の大広間に先日サウストで開発された按摩器が並んでいたので、こっそり使用してみると、瞬く間に肩の疲れが消えた。確か宿泊施設だけは王から工面してもらえるのだったか。羨ましい限りである。
按摩器の快感に酔いしれていると、やがてツネツキが現れた。
簡単な情報交換を行うと、昼の内に一組購入しておいた遠聴玉の受手側を渡した。これで距離が離れていてもツネツキとの相互会話が可能になる。
ツネツキは「どれだけ私をこき使うつもりなんだろうねえ」と笑っていた。
そういえば、一度ネズミがマウの胸を触っていたなどという話を聞いたので、魔王討伐後にあいつは殺すことにする。
どうも先程から外が騒がしい。
初めは酔っ払いが喧嘩しているのかとも思ったが、どうやらそんな暢気な話でもないらしい。
様子を見にいくとするか。今日はここでペンを置く。