トイ月ロニ日
連日、魔物と戦ってばかりだ。シンが近付いてきたからだろうか。
強敵こそ現れなかったものの、キャンプ地に到着するまでの道程で相当量の魔物を斬った。両手では到底数え切れない。
俺だけでなくマウ一行もリザードマンだけで30は倒したといっていたから、やはり相当なものだろう。15年前を思い出す。
戦闘続きだったせいもあってか、俺がキャンプ地へ辿り着いたのは夜も更けてきた頃合いのことだった。
マウ一行は俺よりも半刻ほど早めに到着。運の悪いことに、マウ一行が到着するとキャンプ地はヒドラに襲われているところだったそうだ。
ヒドラ。ヒドラである。
体長は10メートルを超える、大型ドラゴンの一種だ。
ついにそのレベルの魔物が登場してきてしまった。
キャンプ地にいた船大工も何人かはヒドラの吐く火息で焼かれて犠牲になった。マウ一行が、というかワンダが到着しなければ、もしかしたらキャンプ地は壊滅していたかもしれない。
ワンダはヒドラを目にするとすぐさま目前に氷の壁を出現させた。
続けてマウがキャンプ地の護衛兵たちと協力し、氷の壁を越えて、矢の雨を降らせる。
それでヒドラは飛んで逃げることができなくなったため、その隙にワンダが木の根を急速に成長させ、ヒドラの手足を縛り地面に固定。
身動きの取れなくなったヒドラを、ネズミや護衛兵らが刀でめった差しにして、ようやく終いとなったらしい。
俺が到着すると、すでにヒドラの巨体は解体されている最中だった。
てっきりキャンプ地の連中が仕留めたものだと思っていたが、後でツネツキから聞いて、マウ一行の健闘を知った。
キャンプ地はさほど大きくはない。油断しているとすぐにマウに気付かれてしまう。
俺は馴染みの船大工の顔を見つけると、無理矢理そいつのテントに厄介になることにした。
「本当に図々しい奴だなお前は」と言われたので「図々しいついでに俺の船も作ってくれ。2日以内だ」と頼むと呆けられた。
数十秒待っても動かなかったので、さてはショック死してしまったかと頬をビンタしてやると「お前馬鹿か」と答えがあった。「馬鹿ではない。後で王から謝礼もあるはずだ」と責任の伴わない約束をしてやるが了承しない。
仕方ないのでぐちぐちと耳元で小一時間文句を言ってやると頷いた。
これからずっと俺の相手をするよりも船を作ってしまった方が楽だと気付いたらしい。賢明な判断だ。ちなみに名はショウジョウという。
ショウジョウに訊いたところ、すでにキャンプ地は幾度も魔物に襲われているらしい。
王の指示で優秀な兵士をかなりの数配置しているから何とかなっていたが、大型の魔物は初めてだったらしく、それでヒドラには苦戦していたとのことだった。
とはいえ、そんな中でもマウの船は大破させずに守り続けているとのことだったから、護衛兵たちはやはり優秀なのだろう。
一昨日解体した兎は朝の内に平らげてしまっていたから、夕食はヒドラの肉をいただいた。
この時は「図々しい」とは言われなかった。ヒドラの巨体ならばそもそもキャンプ地の人間では食い切れない量だろうからな。余っていたのだろう。
満腹になって気分が良いので眠る。




