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トイ月ロハ日

 肝が冷えた。今日ほどマウの旅を見守ってきて良かったと思った日はない。


 順を追って書く。

 忘れはしない。正午ちょうどのことだ。マウ一行は僅かな食事休憩を終え、馬を走らせ始めた頃合いだった。

 馬が、急に足を止めたのだという。不思議に思い、ネズミが馬車から降りると街道脇に女が立っているのを見つけた。

 馬鹿なネズミは彼女に声をかけてしまった。するとネズミの体も固まった。片足を上げた状態で固まったのでその場に倒れてしまう。

 それを見てようやく危険を悟ったマウやツネツキ、ワンダも馬車を降りて臨戦態勢に入ったが、時すでに遅し。女は、三人と目を合わせていた。

 マウとツネツキも停止させられ、対魔服を着ていたワンダだけはなんとか馬車の中へ逃れたものの、じわじわと体は固まってゆく。そこで遠聴玉の存在を思い出し、かすれた声で俺へ助けを求めたのだ。


「メドゥーサに全員やられた」


 俺は愛馬に鞭打って急ぎマウ一行の元へ向かった。

 メドゥーサに見られたからとて、実際に石になるわけではないし、死んでしまうわけでもない。

 ただし、動かない隙にメドゥーサにとどめを刺されてしまったらそれで終わりなのだ。

 間に合ったのは、本当に運が良かったという他ない。俺と馬車との距離が数100メートル程度しか離れていなかったというのも功を奏した。

 メドゥーサは倒れたネズミの脇にしゃがみ、牙のついた口を大きく開いているところだった。

 時間がなかった。俺は愛馬の尻を鞭で打ち、そのままメドゥーサを撥ね飛ばした。

 メドゥーサを相手にするのなら先手必勝あるのみだ。メドゥーサが倒れた位置を確認すると、俺は馬から飛び降り、目を瞑り、刀を振り上げてそちらへ突撃した。

 向こうが起き上がる前になんとか刀を振り下ろすことができた。

 踏み込みは十分、タイミングも良かったようで、手応えを感じて目を開けると、刀はメドゥーサの脳天をかち割っていた。

 刀を引き抜くと脳髄が辺りに散った。メドゥーサはぱっと見は人間に似ているため、魔物でなく人間を殺してしまったかのような嫌な気分にさせられる。


 念のためマウには服の切れ端で目隠しをし、四人の顔へメドゥーサの血を塗った。

 さすが魔法使いというべきか、最初に目覚めたのはワンダだった。

「メドゥーサは倒しておいた。四人とも無事だ」と言ってやると、ワンダは深く息を吐いた。安心したのだろう。

 他の三人が目覚める前に、俺は馬に乗ってその場を去った。

 ワンダには「お前が倒したことにしておけ」と伝えたが、よくよく考えてみればメドゥーサの死因はどう見ても刀傷によるものだ。ワンダの創作力と演技力に期待する。期待できないが。

 ……ちょっとツネツキに確認してみるか。


 良かった。特にマウは疑問を抱いてはいなかったようだ。

 メドゥーサの死体に目を向けなかったからだろう、と言っていた。ほっとした。

 精神的に疲れた。やはり戦闘に関しても任せきりにはできないな。

 今日はもう眠る。

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