トイ月ロイ日
宿へ到着した。まだ夕飯を食べて間もないが、早々に眠ってしまうとしよう。
オオイバラの件があるので不安だが、今回はツネツキが街の夜警に合流するとのことだった。何かあったとしてもすぐに俺へ連絡が飛んでくるはずだ。
ヨウドへは、まだ日が高いうちに到着した。
思いのほか早い到着となったのは、マウがチュウジを急かしたかららしい。オオイバラの件で、マウの使命感に勢いが増したのだろう。
到着後、すぐさまマウは枢機卿の下へ向かい、マルコガラスを受け取ってきた。
その後、マウ一行は宿屋へ入り、チュウジを残して三人で食料や日用品の調達へ向かったとのことだった。
それ以降、特にツネツキからの報告はないが、まぁ、特に目立った事件も起こっていないのだろうな。
俺はといえば、古い顔を見ておくのも悪くないと思い、マウが去った後に枢機卿の教会へと向かった。
教会前で街の人間の相手をしていた助祭が俺の風体を見て嫌な顔をしていたが、枢機卿・ツバキへ俺の名を伝えさせるとにこにこした表情で戻ってきた。神に焼かれろ。
15年ぶりだというのにツバキは俺の顔を覚えていた。
開口一番の発声が「さっきお前の娘が来よったぞ」である。普段から多くの人間に会う仕事だ。人の顔を覚えるのは得意なのだろう。
続けて「ええおっさんになったのお」と挑発されたので「じいさんはじいさんのまま変わりないようだな。まだくたばらないのか」と返した。「お前も無礼な中身は変わっとらんわ」と笑っていた。
しばらく近況を伝え合った後、別れ際にエリーの件を聞かれたので、正直に「前の戦いで死別した」と答えた。いつも騒々しいじいさんが黙り込むところを初めて見た。
教会を後にすると、夕飯を食いに食堂へ向かった。
まだ時間も早かったのでテーブルの大半が空いており、居心地が良かった。
ヨウドは背後に山々が控えているため、茸や山菜などが多く取れる。アク抜きをして塩だけを調味料に出されたそれらの旨さに舌鼓を打った。
オオイバラの件を反省し先に値段を確認したところ想定よりも安値だったものだから、俺は満腹になるまで注文を続けてしまった。それで腹が膨れて眠気に襲われている次第だ。
こちらも食料などの補充をしようかと思ったのだが、マウらと鉢合わせるとまずい。別に調達は明日の出発前に済ませても良いだろうと、今日のところは宿屋に戻ることにした。
そして今に至る。
それでは眠るとするか。
ツネツキから連絡があった。眠れなくなった。ひとまず書き留めておく。
ネズミの馬鹿が逃げ出した。しかもパーティの残金全てを持ってだ。
三人が買い物に出かけている隙を突いたらしい。ツネツキも反省していた。
まったく、オオイバラの件で見直していたのだが、大きな間違いだったな。
ツネツキ曰く、確かに最近は様子がおかしかったとのことだ。オオイバラの件があいつの死への恐怖を増幅させてしまったのだろう。
ネズミは馬車に乗っていってしまった。
ツネツキに「馬を貸してくれ」と頼まれたので「俺が連れ戻すから待っていろ」と伝えた。
そういうわけで少し急ぐ。今日の日記はここまでだ。




