いきなりの転校
「お前、いつまでおれの名札を付けてるのさ。」
そう言えば、2時間近く裕一の名札を付けっぱなしだったのを忘れてた。
「ごめん、忘れてた。自分の名札だと思ってずっと付けっぱなしだったよ。」
「まあ、別に違和感はないけどな。」
「言われてみれば、同じ滝野だからこの格好でも違和感ないや。」
「そのまま付けっぱで帰るなよ。」
「わかってるよ。」
「裕一、有香。話があるから下りてきなさい。」
1階からお父さんの声がした。
何か重要な話でもするのだろうか。
わたしたちは、お父さんのいる1階へ向かった。
1階の居間に行くと、お父さんの他におばあちゃんといつの間にか帰っていたおじさんたちがいた。
「どうしたの? みんな揃って。」
なんだかものすごく空気が重い。
「お前たちにも関係ある話だからな。って、有香はなんで裕一の学校の名札を付けてるんだ?」
おじさんに名札のことを指摘された。
「ちょっとしたお遊びで付けてるんだ♪」
「ふーん。」
「ところで、話って何?」
早速、お父さんに尋ねてみた。
「有香、実はお父さんな、9月から海外で仕事しなければならなくなったんだ。」
「えっ!?」
お父さんの口から出た「海外で仕事」にわたしは驚いた。
「それじゃ、わたしはどうなるの?」
「すまないが、お父さんが戻ってくるまでおばあちゃんの家にいてもらおうと思ってる。」
「それじゃ、学校も転校するってこと?」
「そうなるな。」
いきなりお父さんに転校の話を出されて、わたしは戸惑うしかなかった。
「それじゃ、もう上野山小には通わなくなるんだね。」
「そういうことだな。」
「そんな…。」
「…てことは、今の有香のその格好が9月から現実になるってこと?」
「そうだね。裕一と同じ水主池小に通うことになるね。」
「おいマジかよ…。」