名札付け比べ
「てか、有香の学校の名札って、手書きなんだな。しかも、ご丁寧にフルネームだなんて。」
裕一は、わたしの学校の名札に興味を持ち始めた。
「それじゃ、裕一の学校の名札ってどんなやつ?」
「ちょっと待って。机の引き出しにあるから。」
そういうと、裕一は机の引き出しを開けて名札を探し始めた。
「ほい、見つけたよ。」
そして、見つけた名札をわたしに投げ渡した。
「へえ。わたしの学校の名札より、ちょっと大きいね。」
大きさを比べてみると、わたしの学校の名札がすっぽり収まる上に、横幅が倍近く長い。
「でかい割にはシンプルだね。学校名と名字しか書かれてないじゃん。」
「そうだよ。学校名と名字の彫られた名札を、フェルトに縫い付けてビニールケースに入れただけ。」
「学年やクラスはどう見分けるのさ?」
「学年はフェルトの色がそれぞれ違うから、それで判別してる。クラスは、名札ではわからないね。まあ、2クラスしかないからそこまで重要じゃないし。」
「ふーん。」
「俺も、こっちの学校に替わってその名札を付けた途端、胸元が重く感じたからね。」
「だろうね。ちょっと、試しに付けてもいい?」
「別にいいけど。」
「んじゃ、付けてみよ♪」
わたしは、胸元の自分の名札を外し、裕一の学校の名札を胸元に取り付けた。
「うわっ!? 胸元が重い!?」
さっきまで付けてたわたしの名札よりも、とても重く感じた。
「俺らは学校のある日は毎日付けてるんだぜ。そう思うと、有香の学校の名札がうらやましいと思うもん。」
「確かに、慣れないと毎日はきついかもね。」
こんな重い名札を付けてるなんて大変だなって思うわたしだった。
「ところで、この学校の名前ってなんて読むの?」
わたしは、名札に書かれている学校名を裕一たちに尋ねてみた。
「水主池小学校。読めないだろ?」
「これで“かこがいけ”って読むの!? “みずぬしいけ”って読むかと思った…。」
「最初は誰だってそう読むんだよね。どこをどう読んだらそうなるやら。」
「だから、名札を付けてても学校名がわかってもらえないんだよね。」
「だろうね。」
そのあと、わたしたちはお互いの学校の話題で盛り上がり、気づいたら夕方になっていた。
「それじゃ、俺も帰るわ。」
智哉くんが帰るみたいだ。
「それじゃ、また今度な。」
「智哉くん、またいつか遊ぼうね。」
「そうだな。こっちに来たときには裕一経由で教えてね。」
「わかった。」
「じゃあね。さよなら。」
そういって、智哉くんは帰っていった。