名札のおかげ
おばあちゃんの家に戻り、早速裕一の部屋に向かった。
「有香、智哉と一緒に部屋に行ってて。」
「うん、わかった。」
わたしは智哉くんを裕一の部屋に案内した。
「裕一の家ってでかいんだな。」
「でしょう。わたしの家よりも大きいもんね。」
「裕一の部屋もめちゃくちゃ広いし、俺もこんな家に住んでみたいな。」
裕一の部屋を見て、とても羨ましがっている智哉くんだ。
「二人とも、お待たせ。」
裕一が部屋に入ってきた。
それと同時に、裕一は質問をしてきたのだ。
「お前らって、今日初めて会ったんじゃないの?」
「たぶん、そのはず。少なくとも、わたしは初めてかな。」
「俺もたぶん初めて。もしかすると、何回かすれ違ってるかもしれないがな。」
「は? どういうこと?」
「実は、智哉くんは去年までわたしの通ってる学校にいたんだって。」
「えっ、そうなの?」
「ああ。今年の春にここへ引っ越して来たからな。
」
「そんでさっきね、智哉くんと初めて会ったとき、智哉くんはわたしの学校の名札を見て反応したもんだから、話を聞いたわけ。それで、意気投合っていう感じ。」
「そういうことか。なんでかなと思ったけど。」
ようやく疑問が解けた感じの裕一だ。
「まさか、こんな田舎町で前の学校の子に知り合えるなんて、びっくりだな。」
「ホントだね。たぶん、この名札がなかったらわたしたちはまだ仲良く話なんかしてないだろうね。」
ある意味、学校の名札を付けたままでよかったのかもしれない、そう思うわたしだった。