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Folktale-side DARKER-  作者: シブ
第二部
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第四十二章

「伝令。第三部隊、並びに第五部隊壊滅。左翼の陣が瓦解しつつあります、直ちに増援をとの要請が!」

「後詰の隊から、二個中隊を回せ。その後、パッカーの隊を前面に押し出し、そこはもたせろ。リエン、準備の程はどうなっている」

「あと数分、という所ですね。それにしても、流石に皇国軍は屈強のようで。計算では、もう十数分は長引かせるはずでは?」

 前線の焦りは後方へ届かず、ライラとリエンは共に平静を保っていた。前線の崩壊は予定通りに進み、相手方の陣は思惑通りに動いている。それが、二人の掌で踊らされているだけとも気付かぬままに。

「一つ気がかりなのは、レイル・トルマンやジェノス・ダークレイが動かない事だがな。前線からの報告には一切名前が出て来ぬ上に、ここ数日で奴らを見たという話さえ届かん。あれらが、大人しくしているとも思えぬが……」


「上から覗いてみたけど、特に変な様子も無いぞ?確かに順調すぎる感じはするけど、気にしすぎなんじゃないか?」

 嫌な予感がする、とミネルバは呟いていた。作戦は決まり、後は実行するのみ、という段階での事。念の為にとテリー、ゲイルの二人が肉眼で確認しに行った所である。

「待て。こっちから見ると右翼方面、か。何か動きが怪しくないか?わざわざ皇国軍を自陣深くに誘き寄せて、しかも包囲するわけでもなく、ただそこで足掻いてる感じ。だよな?」

「あー、あれなら包囲殲滅も出来そうだよな。後方には別働隊もいるみたいだし、騎馬兵だっている。それに兵士は大半があの改造兵なんだろ?機動力って時点で、十分有利だよな……。テリー、一回戻って作戦の立て直しだ」

 彼らが集ったのは、戦略・地形的どちらから見ても意味の無い、そんな崖の付近だった。近隣の住民は全て避難しており、民間人への被害は抑えられている。とはいえ、最寄の人里さえ戦闘区域からは遠く離れているのだが。

「その状況で、帝国側が動かないだと?おい、『千里眼』はまだ用意出来ていないのか?」

「どれ程才能があっても、この短時間であれは作れませんよ。リエンさえ動かないという事は、また大規模魔法でも仕掛けるつもりでしょうか?」

 話を聞いたジェノスとユーリは、そう推測していた。現状では、誰もが軽率に動くような真似はしない。目的の為、そしてまた全員で集まり、笑う為に。

「話していても仕方ないでしょ?二手に分かれて、それぞれ個別に動く、それしか無いと思うのだけれど。そうね、私とゲイル君、シャルちゃんの三人で帝国軍側。後衛は―――」


 レイルとクロハは、戦場全てを見渡せる崖の上にいた。帝国軍が持っていた『神眼』はとうに破壊されており、戦況を掴むにも人力に頼らざるを得ない。それを利用し、二人は威風堂々とその場に降り立った。

「まず、あそこの右翼隅に紛れ込む。最初に帝国軍の先陣を叩いて、後は―――」

「突出してきた皇国、帝国を突破してライラとリエン、だっけ?あれを倒して終わり、だよね。う、自分で言ってみたけど、こりゃ大変……」

 二人の目的は、戦況を混乱させてからの終結にある。その為には、多少なりとも、皇国軍にも出血を強いる事が必要と彼は考えていた。自分でさえ無茶だと思えた事を、守りたいと思った相手にも同行させる。それは彼の心を少なからず痛めつけていたが、傍にいてほしいと願った。利己心とは分かっていても、感情を抑える事は、今の彼に出来る事ではない。

「行くぞ。二時間、それだけで全部片付ける」

 短い号令の後、二人は同時に崖を滑り落ちていく。開戦から既に一年もの月日が流れ、一時は泥沼ともなったこの戦乱。それも終わりが見え、終幕は手の届く所まで迫っていた。


「伝令!自軍右翼部、敵中軍まで侵攻!」

 リーエの元へ届いた、その報告。その直前、レイルらしき人影を見たという報告もあり、彼女はその状況を推測している所だった。彼の思惑は見て取れず、それを喜ぶべきか、それとも……。

「念の為だ。アッシュ、本陣を前へ出し、同時に戦線も押し上げろ。キリエ、遊軍を率いて右翼後方へ移動しろ。伝令、そのまま左翼へ指令を出せ。ヴァンデーラに左翼前方の指揮権を預ける、とな。奴にはそれで十分伝わるはずだ」

 この戦場には、ほぼ全将軍を率いていた。数名は首都の防備に回していたが、それでもその総戦力に影響は及ぼさない。かつての大戦、それを経験し生き抜いた実績を持つ為に。リーエの指揮を待つ事も無く、全員がそれぞれの役に就いていった。その団結、状況判断の的確さこそ、皇国軍の将である証。会戦の趨勢は最早、揺るがない場面まで決定付けられようとしていた……。


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